Overview
Bluetooth、WiMAX、cdma2000、ZigBee、GSM、EDGE、RFID ― これらは全て、近年急速な成長を続けるワイヤレス通信規格です(図1参照)。同時に、現在では 携帯電話でテレビ番組を見たり、GPSで位置情報を得たりといったことが一般的に行われるようになってきています。多くの国でワイヤレス通信が有線通信を上回る成長を示す中、高速データ通信のニーズに効果的に対応することが、モバイル通信にとっての今後の課題となっています。

図1. ワイヤレスネットワーク/接続への高い需要により、多くのワイヤレス/通信規格が乱立
製品のリリース競争は激しく、研究と設計が計測より優先されています。メーカーは、規格が完成せず、各通信規格対応の計測器がない中、ZigBee、802.11n などに対応のデバイスを市場に投入しています。それは主に、ワイヤレス規格をリリースし、主要ユーザ向けに試作を行ってから、一般市場向けにテスト機器を開発するという従来のサイクルは長すぎるという理由からです。同じ期間内に公開される多くの規格にこのモデルを横並びに当てはめて考えると、計測機器メーカーは、市場投入が遅れてしまうことを覚悟の上で規格に準拠した計測機器を時間をかけて開発するか、広がらない可能性がある規格に対応した計測機器に多額の開発費用を投じるかの難しい決断を迫られます。そのため、エンジニアは各規格に対応できる柔軟なソリューションを探し求めることになります。
ソフトウェアで設定する柔軟性の高いテスタ
ソフトウェアを活用することにより、RF/無線関連の研究開発をスピードアップすることができます。新しい無線通信の手法の開発にはまずソフトウェアを使用して、チャンネルコーディング、変調方法やアルゴリズムをシミュレーションします。シミュレーションの次のステップは実測ですが、シミュレーションで試したチャンネルコーディングや変調手法をそのまま入出力ハードウェアを使用した実信号で試すのが論理的な解決法です。このようにソフトウェアでチャンネルコーディングや変調を定義することをソフトウェア無線(SDR)方式といい、ソフトウェア無線方式によるテストは、完全な用途指向でありユーザ定義式となっています。この方式を推し進める支持者の1つが、米国防総省(DoD)です。Joint System Program 理事長で JTRS プログラムのプログラムマネージャーでもある Steven MacLaird 大佐は、SDRフォーラムで次のように述べています。
「軍事において SDR は、あらゆる作戦区域で連合国軍といつでも通信可能な相互操作性の高い無線を開発できる転換技術です。」
図2は、ナショナルインスツルメンツの LabVIEW ソフトウェア で書かれたシンプルなデジタル通信プログラムです。ここに含まれるコードには、ソースコーディング、チャンネルコーディング、変調、送信側のアップコンバージョン、受信側のダウンコンバージョン、復調、チャンネルデコーディング、ソースデコーディングなどがあります。また、実環境の通信リンクには、ハードウェア機器と送信が行われる物理チャンネルが含まれます。

図2. LabVIEW 対応の NI モジュレーションツールキットを使って開発することで、設計中のデジタル通信システムに従ってコードを作成することが可能
事例:テキサス大学による MIMO-OFDM の開発
MIMO-OFDM システムの開発において、ソフトウェアを中心とした計測アプリケーションが実現されました。MIMO(Multiple Input Multiple Output)および OFDM(直交周波数分割多重)という2つのテクノロジは、4G モバイル移動体通信や 802.11n Wi-Fi データネットワーキングといった最新の無線/データ規格の多くに採用されている新技術です。これらは、それぞれ携帯電話とコンピュータの契約者数やデータスループットを向上することを目的として開発されたものです。OFDM には RF 干渉に対する抵抗力や、高スペクトル効率、低いマルチパス歪みなどのメリットがありますが、MIMO ではマルチパス信号伝播により帯域幅の向上が図られています。テキサス大学オースティン校の Wireless Networking and Communications Group(WNCG)は、このシステムの特性を分析してMIMO-OFDM の利点を検証しました。WNCG に所属する3人の研究者によって実施されたこの研究は、シミュレーションとハードウェアの完全統合という2つの主要コンポーネントからなり、6週間足らずで完了しました。
シミュレーションには、データシミュレーション関数や解析関数(VI)を搭載した NI LabVIEW を使用しています。また LabVIEW 環境では、通信システムの設計、シミュレーション、解析に特化して開発された2つのツール、NI スペクトル計測ツールキットと NI モジュレーションツールキット を利用することができます。当グループは、これらのツールを使用して、チャンネルコーディング、電源、転送レートなどのシステムパラメータをダイレクトに制御しながら、フェーディングやマルチパス干渉を追加してシステムのイミュニティや応答を特定しました。また、シミュレーションを利用してライブデータを送信し、物理層パラメータやチャンネル特性の調節による効果を確認することもできます。これは、ソフトウェアで構成するシステムでのみ可能なものです。さらに WNCG チームは、アンテナの数とアンテナで受信したデータを処理するアルゴリズムを調節することで、データスループットの効果を確認しました。この環境で WNCG の研究者は、シミュレーションを介して、次世代データ通信における MIMO-OFDM のメリットと弱点を効果的に評価することができました。図3は、MIMO-OFDM の研究で WNCG が使用したインタフェースの1つを示しています。
図3. NI LabVIEW を使用したテキサス大学 WNCG チームのMIMO-OFDM インタフェースによる送信画像と受信画像の比較
シミュレーションソフトウェアを完全実装
次に WNCG チームは、ソフトウェアシミュレーションコードを再利用して、ハードウェアをベースにした MIMO-OFDM ワイヤレス送受信システムを開発しました。そのシステムの開発には、ベースバンド/IF 周波数生成のための任意波形発生器や、MIMO-OFDM システムのアップリンクを確立するための RF アップコンバータモジュールなど、NI モジュール式計測器を使用しました。それと同様に、ワイヤレストランシーバのダウンリンクには、デジタイザ/RF ダウンコンバータモジュールを使用しました。次に PXI シャーシ内のモジュールに組込コントローラをインストールして、高スループットと計測のリアルタイム処理を実現しました。図4は、ナショナルインスツルメンツの PXI-5660 RF ベクトル信号発生器と PXI-5670 ベクトル信号アナライザ を採用したそのシステムを示しています。

図4. 2つのアンテナを持つ送受信用 MIMO-OFDM システムのブロックダイアグラム
システムが完成すると、ハードウェアベースの送受信システムを使用して、仮説とシミュレーション結果を検証することが可能となりました。WNCG の研究者は MIMO-OFDM 送受信システムのシミュレーションと設計にソフトウェアを使用し、ハードウェアを使用した送受信が可能なシステムへの移行は、6週間足らずで効率よくスムーズに行われました。
ソフトウェアで構成する計測器のトランスミッタ設計で難しいのは、正確な変調を行うのに適した波形を生成することです。LabVIEW 対応の NI モジュレーションツールキットには、正確な変調を実現するのに必要なビルディングブロックが数多く搭載されています。また、一般的なチャンネルコーディング、等化、計測などの関数も含まれていますので、波形の作成や解析が簡単です。波形の作成が完了、つまりレート、帯域幅、周波数など、ハードウェアのパラメータの構成が終わったら、波形をダウンロードすることにより波形生成は完了します。
ソフトウェアで構成可能な通信システムで、今後の変化にも対応するプラットフォームを構築
通信テストシステムをソフトウェアで構成する傾向は、これからも強まってゆくでしょう。規格の開発と連動してテストシステムの開発を進められるため、この流れは好意的に受け止められています。ソフトウェアで構成したテストは現在の通信システムに対応していますが、重要なのは、今後の新しい通信システムにも対応できるプラットフォームを提供するという点です。
Ron Harrison
RF and Communications Product Marketing Manager
ron.harrison@ni.com
LabVIEW 対応の NI モジュレーションツールキットのサンプルのほか、RF/通信に関する各種資料(英語)をダウンロードできます。
This article first ran in the February 7, 2006, issue of NI News and the Q1 2006 issue of Instrumentation Newsletter.
Legal
This material is protected under the copyright laws of the U.S. and other countries and any uses not in conformity with the copyright laws are prohibited, including but not limited to reproduction, DOWNLOADING, duplication, adaptation and transmission or broadcast by any media, devices or processes.

