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ドキュメントタイプ: チュートリアル
NI 製品対応: 有り
発行日: 2008/01/06


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工業計測に必要な高い信頼性を実現する絶縁技術

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概要

工業/プロセス制御アプリケーションにおいて、電圧/電流/温度/圧力/歪み/流量計測は極めて重要な部分です。そのようなアプリケーションでは、危険電圧や過渡信号、コモンモード電圧、接地電位の変動などが発生する環境にあり、計測システムに障害を及ぼす可能性や計測精度に影響を与える可能性が大いにあります。 そのような難題を克服するため、工業用アプリケーション用に設計された計測システムでは、電気的な絶縁処理を行っています。 このホワイトペーパーでは、アナログ計測における絶縁について説明し、絶縁に関する一般的な質問に対する回答や、様々な絶縁実装技術に関する情報を提供します。

絶縁とは

絶縁とは、危険な電圧1にさらされる可能性のあるセンサ信号を、計測システム側の低電圧バックプレーンから電気的に分離するものです。 絶縁を行うと、以下のようなメリットがあります。

  • 高価な機器、ユーザ、データの過渡電圧からの保護
  • ノイズイミュニティ性の向上
  • グランドループの除去
  • コモンモード電圧除去性能の強化


絶縁された計測システムは、センサ側のアナログフロントエンドとPC側のシステムバックプレーンで別々のグランドプレーンを使用することで、センサ計測をシステムの他の部分から切り離すことができます。 絶縁機能付きフロントエンドのグランド接続は、接地グランドとは異なる電位で動作可能な浮動ピンです。 図1は、アナログ電圧計測デバイスを示しています。 センサグランドと計測システムグランドの間に存在するコモンモード電圧は、全て遮断されます。 それにより、グランドループの形成を防ぐことができると同時に、センサライン上のノイズが除去されます。

図1. バンク絶縁型のアナログ入力回路

1危険な電圧とは、30 Vrms、42.4 Vpk、または 60 VDC より高い電圧です。 

絶縁の必要性

以下のような場合には、計測システムの絶縁を検討することをお奨めします。

  • 危険な電圧への接近
  • 過渡電圧の発生の可能性がある工業環境
  • コモンモード電圧や変動的なグランド電位が存在する環境
  • 工業用モータなど、電気的ノイズの多い環境
  • 計測システムを介して電圧スパイクが伝達されるのを防ぐ必要のある、過渡電圧の影響を受けやすい感度の高いアプリケーション

コモンモード電圧や高電圧過渡電流、電気ノイズがよく発生するアプリケーションの例として、工業用計測、プロセス制御、自動テストなどがあります。 絶縁機能搭載の計測機器を使用すると、過酷な環境でも信頼性の高い計測が可能です。 患者に直接用いられる医療機器の場合、絶縁処理により電源ラインの過渡電圧が機器を通して患者に伝達されるのを防ぐことができます。

絶縁計測には、電圧とデータ転送レートなどの条件によっていくつかのオプションがあります。 プラグインタイプのデバイスは、ノートブック PC、デスクトップ PC、工業用 PC、PXI、Panel PC、CompactPCI で使用でき、絶縁機能付きや外部信号調節を使用したオプションがあります。 また絶縁計測は、プログラマブルオートメーションコントローラ(PAC)と USB 対応計測システムを使って行うこともできます。

図2. 絶縁機能付きデータ集録システム

絶縁の実装方法

絶縁を行うと、直接的に電気接触することなく信号が絶縁バリアを通して導通されます。 発光ダイオード(LED)、コンデンサ、インダクタの3つのコンポーネントは、直接の接触がなくても電気信号の導通が可能です。 これらのデバイスの基となっている原理が光結合、静電結合、および誘導結合で、一般的な絶縁技術の核となるものです。


光結合
LED は、電圧が印加されると光を生成します。 光学絶縁では、LED とともに光検出デバイスを使用して、電気信号を光に変換し、絶縁バリア上を光信号が導通します。 光検出器は、LED が伝達した光を受信し、それを元の信号に再度変換します。

図3. 光結合

光学絶縁は、絶縁の中でも最も一般的に使用されているものです。 光学絶縁のメリットとして、電気/磁気ノイズへのイミュニティがあります。 デメリットとしては、LED 切り替え速度の制約を受ける伝送速度、高消費電流、LED の損耗などがあります。

静電結合
静電絶縁は、蓄電板上の電荷レベルによって変化する電場に基づくものです。 この電荷は絶縁バリア全域で検知され、計測された信号のレベルに比例しています。

図4. 静電絶縁

静電絶縁のメリットの1つに、磁気ノイズへのイミュニティがあります。 光学絶縁と比較した場合、静電絶縁では LED の切り替えが必要ないため、より速いデータ伝送レートに対応することができます。 ただし静電結合では電場を利用してデータを伝送するため、外部の電場からの干渉による影響を受けやすくなっています。

誘導結合
19世紀初頭、デンマークの物理学者、ハンス・エルステッドは、電線コイルを流れる電流が磁場を生成することを発見しました。 そして後に、1つめのコイルの変化する磁場のすぐ近くに2つめのコイルを配置することで、電流は2つめのコイルの中で誘導されることがわかりました。 2つめのコイルによる電圧と電流の誘導は、最初のコイルにおける電流の変化のレートにより決まります。 この原理は相互誘導と呼ばれ、誘導絶縁の基礎となるものです。

図5. 誘導結合

誘導絶縁では、絶縁体のレイヤで分離された2つのコイルを使用します。 絶縁体により、物理的な信号伝達が全て遮断されます。 いずれかのコイルの電流の流れを変えることで、絶縁体のバリアを通って2つめのコイルに同様の電流が誘導され、それによって信号が伝送されます。 誘導絶縁は、静電絶縁と同様の高速伝達が可能です。 誘導結合では磁場を利用してデータを伝送するため、外部の磁場からの干渉による影響を受けやすくなっています。

アナログ絶縁とデジタル絶縁

現在では市販コンポーネントが複数市場に出ていますが、その多くは上記のテクニックのいずれかを利用して絶縁を行っています。 アナログ入力/出力チャンネルにおける絶縁は、AD コンバータ(ADC)が信号をデジタル化する前にボードのアナログ部分で行うか、ADC が信号をデジタル化した後に行う(デジタル絶縁)かのいずれかです。 絶縁を実装している回路の位置により、上記のテクニックのいずれかを基に異なる回路を設計する必要があります。 アナログとデジタルのどちらの絶縁を選ぶかは、データ集録システムの性能、コスト、物理的条件などによって決まります。 図6は、絶縁実装の各段階を示しています。

図6a. アナログ絶縁

図6b. デジタル絶縁


以下のセクションでは、アナログ絶縁とデジタル絶縁についてさらに詳しく説明するとともに、それぞれの実装方法をいくつか紹介します。

アナログ絶縁
データ集録デバイスのアナログフロントエンドで絶縁を行うには、通常絶縁増幅器を使用します。 図6a の「ISO Amp」は、絶縁増幅器を表しています。 ほとんどの回路では、絶縁増幅器はアナログ回路における第一のコンポーネントです。 センサから送られたアナログ信号は絶縁増幅器に渡され、そこで絶縁が行われて、AD 変換回路に送られます。 図7は、絶縁増幅器の一般的な配置を示しています。

図7. 絶縁増幅器

理想的な絶縁増幅器では、アナログ出力信号はアナログ入力信号と同一です。 図7で「絶縁」と示された部分では、前セクションで説明したテクニック(光学、静電、誘導結合)のいずれかを用いて絶縁バリアの反対側に信号を渡します。 変調器回路は絶縁回路用に信号を準備します。 光学方式の場合、この信号はデジタル化するか可変光度に変換する必要があります。 静電および誘導方式では、信号を可変電場/磁場に変換します。 すると次に復調回路が絶縁回路出力を読み取り、それを元のアナログ信号に変換します。

アナログ絶縁は、信号がデジタル化される前に行われるため、非絶縁タイプの既存の集録デバイスとともに使用する外部信号調節の設計に使用するには最適な方法です。 この場合、データ集録デバイスが AD 変換を実行し、外部回路が絶縁を行います。 データ集録デバイスと外部信号調節を組み合わせることで、計測システムベンダは汎用データ集録デバイスとセンサに特化した信号調節を開発することが可能です。 図8は、絶縁増幅器を使用した柔軟な信号調節を機能を搭載したアナログ絶縁の実装を示しています。 アナログフロントエンドで絶縁を行うと、ADC(ADコンバータ) などのアナログ回路を電圧スパイクから保護できるというもう1つのメリットがあります。


図8. 柔軟な信号調節ハードウェアで絶縁増幅器を使用

汎用データ集録デバイスと外部信号調節を採用した計測製品は、何種類か市場に出回っています。 例えば、ナショナルインスツルメンツの M シリーズには、高性能のアナログ I/O とデジタル I/O を備えた非絶縁タイプの汎用マルチファンクションデータ集録デバイスがいくつかあります。 絶縁が必要なアプリケーションでは、NI M シリーズにナショナルインスツルメンツの SCXI や SCC モジュールなどの外部信号調節を組み合わせて使用することができます。 そのような信号調節プラットフォームでは、ロードセル、歪みゲージ、pH センサなどの工業用センサへ直接接続する際に必要となる絶縁や専用の信号調節が利用可能です。

デジタル絶縁
ADコンバータは、あらゆるアナログ入力データ集録デバイスにおいて重要なコンポーネントの1つです。 最高性能を実現するには、ADコンバータへの入力信号を元のアナログ信号にできる限り近づける必要があります。 アナログ絶縁を行うと、信号が ADC に到達する前にゲイン、非線形性、オフセットなどの誤差が混入する可能性があります。 ADC を信号源に近づけることで、性能が向上することがあります。 またアナログ絶縁コンポーネントは、コストがかかるとともにセトリングタイムが長くなる傾向があります。 デジタル絶縁の方が、性能が優れているにもかかわらず、これまでアナログ絶縁が使用されてきた理由の1つとして、高価な AD コンバータを保護する目的がありました。 ADC の価格が大幅に低下するなかで、計測機器ベンダは ADC の保護よりもデジタル絶縁器の性能と低コストを優先するようになってきています(図9参照)。


図9. 16ビット AD コンバータの価格の推移

出典: ナショナルインスツルメンツおよび主要 ADC ベンダ

絶縁増幅器に比べ、デジタル絶縁コンポーネントは低コストでありながら高いデータ転送レートを実現します。 また、デジタル絶縁テクニックを使用すると、アナログ設計用のコンポーネントをより自由に選ぶことができると同時に、計測デバイスのアナログフロントエンドを最高性能で実現することが可能となります。 デジタル絶縁を搭載した製品は、電流/電圧制限回路を用いて ADC を保護しています。 デジタル絶縁コンポーネントも、アナログ絶縁の基本となる光学、静電、誘導結合と同じ基本原理に基づいています。

Avago Technologies(www.avagotech.com)、Texas Instruments(www.ti.com)、Analog Devices(www.analog.com)などの主要なデジタル絶縁機器ベンダは、そのような基本原理のいずれかを基に絶縁技術を開発しています。 Avago Technologies は光学結合、Texas Instruments は静電結合、Analog Devices は誘導結合による絶縁器を提供しています。

光カプラ
光学結合原理に基づいたデジタル絶縁器である光カプラは、最も古くから一般的に採用されているデジタル絶縁技術の1つです。 高電圧に耐えられるとともに、電気/磁気ノイズへの高いイミュニティを備えています。 光カプラは、ナショナルインスツルメンツの PXI-6514 絶縁デジタル入出力ボード(図10参照)や PCI-7390 工業用モーションコントローラなどの工業用デジタル I/O 製品で多く採用されています。

図10. 光カプラを採用した工業用デジタル I/O 製品

ただし高速アナログ計測の場合、光カプラには速度、消費電流、光学結合に関連する LED の制約などの点でデメリットがあります。 静電結合および誘導結合に基づいたデジタル絶縁器は、光カプラの欠点をカバーすることができます。

静電絶縁
Texas Instruments では、静電結合を利用したデジタル絶縁コンポーネントを提供しています。 同社の絶縁器は、データ転送レートと過渡電圧イミュニティがともに優れています。 ただし静電および光学絶縁方式と比較すると、誘導絶縁の方が消費電力を抑えることができます。

誘導絶縁
Analog Devices が 2001年に発表したiCouplerR テクノロジ(www.analog.com/iCoupler)は、誘導結合を利用して、高速アプリケーションや多チャンネルアプリケーションに適したデジタル絶縁を提供するものです。 iCouplers は、メガヘルツ単位のサンプルレートを実現する16ビットアナログ計測システムにおいて、100 Mb/秒のデータ転送レートで 2,500 V の絶縁耐圧に対応します。 光カプラに比べ、iCoupler は低消費電力ながら動作温度範囲は125℃と高く、過度電圧イミュニティは最大 25 kV/ms となっています。

iCoupler テクノロジは、小型のチップスケール変圧器に基づいています。 iCoupler は、トランスミッタ、変圧器、受信器という3つの主要部分からなっています。 トランスミッタ回路は、エッジトリガエンコーディングを使用し、デジタルライン上の立ち上がりエッジと立ち下がりエッジを 1 ns のパルスに変換します。 それらのパルスは、変換器を使って絶縁バリア経由で伝送され、受信回路により反対側でデコードされます(図11参照)。 10分の3ミリメートルほどの小さな変換器のおかげで、実質的に外部磁気ノイズの影響は全く受けません。 また、iCoupler を採用することで、1つの集積回路(IC)につき最大4つの絶縁チャンネルを統合して計測ハードウェアのコストを低減できると同時に、光カプラに比べ必要な外部コンポーネントの数も少なくすみます。


図11. 誘導結合を利用したAnalog Devices の iCoupler テクノロジ
出典: Analog Devices(www.analog.com/iCoupler
計測ハードウェアベンダは、iCoupler を使用することにより、高性能なデータ集録システムを低価格で販売できるようになりました。 絶縁機能付き M シリーズマルチファンクションデータ集録デバイスなど、高速計測に適したナショナルインスツルメンツの工業用データ集録デバイスは、iCoupler デジタル絶縁器を採用しています(図12参照)。 複数のアナログ/デジタルチャンネルで、60 VDC の連続絶縁と 1,400 V(実効値)/1,900 VDC のチャンネル-バス間耐圧(5秒)が可能な上、250 kS/秒のサンプリングレートをサポートします。 NI PAC プラットフォーム、NI CompactRIO、NI CompactDAQ、その他の NI 高速 USB デバイスで使用されるナショナルインスツルメンツの C シリーズモジュールでも、iCoupler テクノロジが採用されています。

図12. ナショナルインスツルメンツの絶縁機能付き M シリーズマルチファンクション DAQ の使用方法

まとめ

絶縁機能付きのデータ集録システムを使用すると、危険なレベルの電圧や過渡電流が存在する過酷な工業環境にも耐えうる信頼性の高い計測が行えます。 絶縁の必要性は、計測アプリケーションや周辺の環境により決まります。 汎用データ集録デバイス1台から様々な専用センサに接続する必要のあるアプリケーションでは、アナログ絶縁を施した外部信号調節の使用をお奨めします。 低コストで高性能のアナログ入力を必要とするアプリケーションの場合は、デジタル絶縁搭載の計測システムが適しています。

ナショナルインスツルメンツの絶縁製品

 

 

NI 絶縁機能付き M シリーズ および S シリーズ

 

NI CompactDAQ ‐ USB データ集録システム

 

NI SCXI 多チャンネル外部信号調節

 

NI CompactRIO ‐ 再構成可能組込式制御/集録システム

 

NI Compact FieldPoint ‐ 分散型プログラマブルオートメーションコントローラ

 

NI Motion

 

NI Serial

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