概要
ワイヤレステクノロジは様々なアプリケーションで採用され、その数は年々増え続けています。最新の家庭用電子機器には、数年前では考えられなかったような多彩な機能が盛り込まれています。例えば、ワイヤレス LAN(802.11x)機能を搭載した昨今のカメラでは、ケーブルを使わなくても、Wi-Fi ホットスポットを介してインターネットに画像を簡単にアップロードすることができます。新型のアラーム時計では、リモートワイヤレスセンサを使って身近な測候所に接続し、最新の気象情報を入手したり、アルゴリズムを組込んで収集したデータから予報を発したりすることもできます。ワイヤレス接続技術のおかげで、家庭の時計の時刻を常に合わせる必要もなくなりました。そのような新型の時計は、標準電波送信所から送信される低周波原子時計の信号に同期するようになっています。
このような多様性と、市場投入への高まるプレッシャーにより、様々な実装方法や、短期間での条件変更、複雑化、設計にかけられる時間の短縮など、多くの影響があります。これは、製品の設計、テスト、製造に携わるエンジニアにとっても厳しい状況です。
ナショナルインスツルメンツのソフトウェア/ハードウェアプラットフォームを使用すると、そのような状況に直観的な方法で対応することが可能です。NI の Virtual Instrumentation プラットフォームでは、ツールを利用したモジュール方式により、条件にぴったり合ったシステムを構築できるだけでなく、変更にも容易に対応できるため、条件が変わってもシステムをそれに合わせて進化させることができます。また、市販コンポーネントの進歩も後押ししています。標準 PC を利用している場合、コンポーネントをアップグレードすることで、処理速度の向上によるスループットの向上など、効果を直ちに感じることができます。
ソフトウェア無線への転換
多くの新しいワイヤレスアプリケーションは、デジタル信号処理(DSP)とコンピュータの処理能力の進歩によって実用可能になったものです。そのような進歩が、ソフトウェアラジオアーキテクチャ(SDR)の概念を推進する結果となりました。SDR は、機能固定のハードウェアの代わりに再構成可能なソフトウェアを使用して、送信前の信号処理や信号の送信準備を行うことで、設計上の難しい問題に対処するものです。
SDR は、広帯域ラジオ周波数(RF)ハードウェアを使用して、ソフトウェアで処理可能な波形を集録・送信するという一般的概念が基礎となっています。RF ハードウェアには、中間周波数(IF)信号と RF 信号を互いに変換するための変換ステージが1つまたは複数含まれている場合があります。IF 信号とデジタル領域との変換には、広帯域 A/D または D/A コンバータを使用します。汎用プロセッサ上で実行しているソフトウェアは、サンプリングされた IF 信号を処理して、信号の送信準備を行うか、あるいは受信信号から有用な情報を抽出するなど、複数の手順を実行します。

図1. デジタル通信システムのトランスミッタ(上段)/レシーバ(下段)コンポーネント
アーキテクチャとしての SDR
図1は、SDR によって実装できるデジタル通信システムの要素を示しています。これは、シングルチャンネル/シングルキャリアのデジタル通信システムでありがちな、一般的なソフトウェア/ハードウェアベースのジョブを示したものです。上段は、ソースコーディング、チャンネルコーディング、変調、中間周波数へのアップコンバージョン、D/A 変換、RF 周波数へのアップコンバージョンなど、トランスミッタに共通する機能を表しています。下段は、トランスミッタが実行したジョブを取り消し、信号の劣化をもたらす機能を持つレシーバ側を表しています。レシーバ側の機能には、ダウンコンバージョン、復調、チャンネルデコーディング、ソースデコーディングがあります。
NI プラットフォームのソフトウェア無線機能
ナショナルインスツルメンツでは、SDR に対応したモジュール式の再構成可能プラットフォームに利用できるソフトウェアとハードウェアを提供しています。NI 製品を使用すると、ラピッドプロトタイピング、設計検証、SDR の実装テストなどのカスタムアプリケーションを構築することができます。モジュール構造となっているため、特定のアプリケーションのニーズにぴったり合うシステムを構築できます。また、SDR システム全体の高レベルでの作業や、SDR サブコンポーネントを使った詳細なレベルでの作業にも役立ちます。
ハードウェア側では、NI プラットフォームは PXI をベースにしており、SDR に有用な様々なオプションがあります。中でも重要性が高いのは以下のとおりです。
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NI PXI-5660 RF 信号アナライザ – SDR レシーバの集録フロントエンドとしても機能する、デジタル制御された広帯域 RF デジタイザ(9 kHz~2.7 GHz の周波数範囲内で 20 MHz のリアルタイム帯域幅)。
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NI PXI-5670 RF 信号発生器 – SDR トランスミッタの信号生成フロントエンドとしても機能する、デジタル制御された広帯域 RF 発生器(250 kHz~2.7 GHz の周波数範囲内で 22 MHz のリアルタイム帯域幅)。
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PXI/CompactPCI 対応の NI 再構成可能 I/O オプション – リアルタイム実行が必要な信号処理/生成を容易にするモジュール。PRBS ビット生成、チャンネルコーディング、変調、チャンネルシミュレーションなどが可能です。
プラットフォームのソフトウェアの部分を担うのは、習得が簡単で使いやすく拡張性の高い対話式グラフィカル開発環境である LabVIEW です。LabVIEW は、計測、信号処理、計測器制御などの工学タスクを行うための関数を搭載した汎用グラフィカルプログラミング言語です。ツールキットやモジュールを使用すれば、SDR に関連した通信や RF などのアプリケーションに特化した機能を LabVIEW に追加することができます。
SDR に関連性の高い NI のソフトウェアオプションには、以下のようなものがあります。
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LabVIEW グラフィカル開発環境 – ラピッドプロトタイピング、設計検証、SDR システム/サブシステムのテストなど、カスタムアプリケーションの作成用ソフトウェア。
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LabVIEW 対応モジュレーションツールキット – デジタル/アナログ通信用の関数を追加して LabVIEW を拡張するとともに、SDR トランスミッタ/レシーバ信号チェーンで一般的な多くのタスクを実行する高レベル関数や基礎関数を搭載しています。このツールキットの最新版には、PRBS ビット生成、チャンネルコーディング/デコーディング、変調/復調、フィードフォワード等化、障害の追加、チャンネルモデル、変調領域の計測と視覚化などの関数が含まれています。このツールキットを使用して、SDR サブシステムの試作、SDR サブコンポーネント用のテスト信号の生成、変調領域計測の集録、その他多くの通信タスクを実行できます。
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LabVIEW デジタルフィルタ設計ツールキット – SDR Tx/Rx 信号チェーン全体の複数の場所で一般に適用される固定/浮動小数点デジタルフィルタの設計と実装用の関数を追加して、LabVIEW を拡張します。浮動/固定小数点設計用のツールを搭載し、ANSI C コード、整数の LabVIEW コード、シングルサイクルタイミングループ(SCTL)用に最適化された LabVIEW FPGA コードを自動的に生成する機能を備えています。
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LabVIEW FPGA モジュール – NI 再構成可能 I/O デバイスで再構成可能 FPGA ハードウェアをグラフィカル形式でプログラムするためのモジュール。このモジュールを使用すると、リアルタイム実行を必要とする信号処理/解析/生成を迅速に開発し、PRBS ビット生成、チャンネルコーディング、変調、チャンネルシミュレーションなど SDR 関連のジョブを実装することができます。
新しいタイプのワイヤレス技術
SDR のコンセプトは、ZigBee など新しいタイプのワイヤレスデジタル通信技術でよく利用される要素の概略を示す有用なフレームワークです。IEEE 802.15.4 規格に基づいた ZigBee を利用すると、リモート監視・制御アプリケーションを対象とした低電力、低コストのわかりやすいワイヤレスネットワークの構築が可能です。ZigBee が 802.11x や Bluetooth などの技術と異なるのは、後者の2つが高データレートと数時間から数日間の高電力プロファイルを特徴としているのに対し、ZigBee はバッテリ寿命を数年間維持できる低データレートと低消費電力が強みとなっています。
図2. SeaSolve 社の 802.15.4 準拠テストソフトウェアのフロントパネル
ZigBee は、ビルディングオートメーションなどのアプリケーションに適していると PR されています。大量の銅線を使って空調や照明の制御を行う必要がなくなれば、節約される時間やコストは相当なものです。照明安定器に ZigBee 受信器、照明スイッチに送信機を取り付けることによって、どこでも設置可能なワイヤレススイッチができあがります。そのように設定することで、空調制御を利便性のよい部屋やオフィスに移動させることができます。これは、この新技術の多くの利用方法のほんの一例です。
新技術が登場すると、特定の規格に適合したデバイスの開発とテストが必要になります。そのような適合テストを行うことで、デバイスが規格どおりに動作し、FCC 規定に違反していないことを確認できます。ナショナルインスツルメンツのアライアンスパートナー、SeaSolve Software 社は、ZigBee 規格に基づく適合テストソフトウェアを開発しました。このソフトウェアなら、ご使用のデバイスの規格で指定された14種類全ての物理層 RF テストを実行し、合否結果を得ることができます。
SeaSove 社の ZigBee 適合ソフトウェアを使用すると、ナショナルインスツルメンツの PXI-5660 ベクトル信号アナライザ、PXI-5670 ベクトル信号発生器、LabVIEW、LabVIEW 対応モジュレーションツールキット を使用して、様々な RF テストを実施できます。その14種類のテストは、以下のとおりです。
• スペクトル PSD マスク
• 変調精度
• 中央周波数送信許容範囲
• 最大送信電力
• シンボルレート
• 最大入力電力
• 受信器感度
• 隣接チャンネル妨害抵抗
• 代替チャンネル妨害抵抗
• エネルギー検出(ED)
• リンク品質表示(LQI)
• クリアチャンネルアセスメント(CCA)
• Tx-Rx 応答時間
• Rx-Tx 応答時間
通信アプリケーション用のナショナルインスツルメンツ製品の詳細についてはこちらをご覧ください。
法律関連事項
本チュートリアル(以下「チュートリアル」という)は、National Instruments(以下「NI」という)によって作成されたものです。本チュートリアルは、NIにてサポートされていますが、本チュートリアルの内容に関するテストや検査が完全に行われていない可能性があり、チュートリアルの品質について、もしくは、関連製品およびドライバの各改訂版に対するサポート継続については、何らの保証も適用されません。本チュートリアルは、いかなる保証もなく「作成された状態のまま」で提供されており、ni.com/jpの使用条件に特別に規定されている特定の制約事項に従うものとします。 (http://ni.com/legal/termsofuse/japan/ja/)

