プラグアンドプレイセンサ ~短時間でのセンサ構成を実現する最新テクノロジとその仕組み~
概要
IEEE 1451.4は、現在PCにおけるデバイスのプラグアンドプレイ形式(USBマウスをコンピュータに接続するのに似た方法)をセンサにも応用する規格です。この新基準によりこれまで多くの時間と労力がかかっていたセンサ構成の工程が大幅に簡素化されます。IEEE 1451.4規格は、アナログ信号インタフェースを備えたセンサにセンサ自体の構成情報を含めることを可能にします。アナログ・デジタル信号混合のミックスモードインタフェースを利用することにより、低コストのシリアル型デジタルリンクと既存のアナログセンサ信号を組み合わせ、センサに内蔵されたTEDS(Transducer Electronic Data Sheet) が利用できるようになります。また、既存のアナログセンサでもプラグアンドプレイ機能が利用できるように、弊社ではセンサのTEDS情報をファイル形式で保存するという仮想TEDS概念を定義しました。 TEDSを使用すると、センサは接続先のデータ集録システムに自己認識させ、センサの自動構成を行います。 アナログセンサでプラグアンドプレイ機能が利用できるようになったことは、下記に示す通りユーザや開発者にとっては大きな進歩と言えます。 • これまで以上に迅速なシステムのセットアップが可能 • より高度な診断機能 • センサの修理や交換によるダウンタイムを短縮 • 資産管理の簡易化 • キャリブレーションデータを自動的に使用可能に
目次
IEEE 1451.4 規格
IEEE 1451.4規格は、既存のアナログモードセンサやアクチュエータにセンサ自身の構成情報を付加するメカニズムを規定するものです。センサメーカ、計測器、ソフトウェアメーカ、ユーザが合同で開発にあたった同規格は、センサにアナログ/デジタル両方のインタフェースを持たせることにより、ミックスモード・トランスデューサの概念を定義しています。アナログインタフェースは、温度、圧力、負荷など物理現象を表す電圧信号を従来の方法で転送します。
プラグアンドプレイ(TEDS、IEEE 1451.4)センサは、センサ本来のアナログインタフェース以外に、センサに組み込まれているメモリデバイスの情報を転送するデジタルインタフェースを持ちます。このメモリには、センサやアクチュエータを特定するバイナリの TEDS 情報が入っています。TEDS 情報には、メーカ、センサ型番、シリアル番号、計測範囲、感度、キャリブレーションなど構成に関する情報が入っています。

図1: TEDS情報が組み込まれたプラグアンドプレイセンサ概要図
本来、計測システムを構築するには、センサからのアナログ信号を正確な単位に変換・解釈するためにセンサのパラメータ(計測範囲、感度、スケール係数など)を手入力しなければなりませんでした。現在では、プラグアンドプレイセンサを使用することにより計測システムの自動構成を行えるようになっています。しかも、システム全体の統合性や信頼性にも向上が見られます。
近年のセンサ技術ではプラグアンドプレイセンサ性を提供するものもありますが、IEEE 1451.4が他より勝る理由は、センサのアナログ出力を残しているという点にあります。そのため、プラグアンドプレイセンサは既存のアナログインタフェースを使用している従来のシステムとの互換性を保持しています。また、IEEE 1451.4は、汎用のセンサに容易に組み込むことができる利点を兼ね備えています。IEEE 1451.4規格は主に、TEDS とミックスドモードインタフェースの2つで構成されています。
* TEDS とは Transducer Electronic Data Sheet の略で、トランスデューサに電子的なデータシートを保存できるようにする新しい技術です。
TEDS (Transducer Electronic Data Sheet)
IEEE 1451.4規格の核となるものは、センサ情報テンプレートの定義であり、ここにはプラグアンドプレイ操作を可能とする重要なセンサ情報(TEDS)が含まれます。TEDS は通常センサに内蔵されている EEPROM 上に記載され、シンプルな低コストシリアルインタフェースを介して計測システムとのデータのやり取りを行います。
IEEE 1451.4規格は、コンパクトでありながら様々なセンサの種類に対応できるだけの柔軟性、拡張性を兼ね備えられるように TEDS 構造を定義しています。TEDS 情報はいくつかの重要なセクションに分割されます。最初のセクションは基本 TEDS と呼ばれ、センサのメーカ、型番、シリアル番号など、センサを特定するのに必要な情報が含まれています。基本 TEDS の次に IEEE 標準 TEDS が来る場合、ここにはセンサ特定の追加情報が含まれます。これは通常、電子インタフェースを正確に構成したり、計測データを適切な工学単位に変換するのに必要とされます。典型的な TEDS パラメータとしては、計測範囲、電気出力範囲、感度、励起特性、キャリブレーションデータが挙げられます。標準 TEDS のセクションでは、センサを使って計測を行うのに必要なもの全てが記載されています。
IEEE 規格は、異なる一連のセンサタイプ用に標準 TEDS テンプレートを規定するものです。このテンプレートにより、計測システムはプラグアンドプレイセンサの EEPROM(もしくは仮想 TEDS ファイル)に保存されたバイナリデータをセンサに合った有意なスペックに変換できるようになります。IEEE 規格のテンプレートの中には、IEPE (定電流励起型)加速度計やマイクロフォン、IEPE 圧力センサ、ブリッジセンサ、ひずみゲージ、力負荷トランスデューサ、熱電対、RTD、サーミスタ、LVDT/RVDT、抵抗センサ、あらゆる電流・電圧出力センサ、また、同規格によりセンサメーカは標準のテンプレートの代わりもしくは標準テンプレートへの追加として使用できるカスタム仕様のサブテンプレートを定義することが可能となり、特殊なパラメータにも対応できるようになりました。

表 1. IEEE 1451.4 TEDS情報の構造(IEPE加速度計、ブリッジベースのロードセル用サンプルテンプレート)
TEDS の最後のセクションはユーザが利用することができ、このセクションにカスタムデータや情報を保存することができます。これは、センサの位置情報をはじめとしてメンテナンスやその他ユーザ定義のカスタム情報などをセンサ上に保存することができます。尚、TEDS 情報の大きさによりユーザ定義可能なメモリスペースが異なりますので、場合によっては ID としてコード化することを推奨します。
IEEE 1451.4 ミックスモードインターフェース
IEEE 1451.4で規定されているプラグアンドプレイセンサには、アナログ信号(計測信号)とシリアルデジタルチャネル(デジタルTEDS情報へのアクセス用)の両方に対応できるミックスモードインタフェースが採用されています。同規格では2種類のミックスモードインタフェースを規定しています(クラス 1、クラス 2インタフェース)。
クラス 1インタフェースは主に定電流励起型とする圧電センサ(加速度計、マイクなど)を対象としたもので、一対のワイヤ上でアナログ信号とデジタル TEDS データの切り替えを行うための仕組みを定義しています。一般的に IEPE (integrated electronics for piezoelectric)と呼ばれている定電流励起型センサは信号調節器が内蔵され、外部からの励起電流で信号調節器を駆動しています。クラス 1センサは励起の特長を活かし、図2に示すように、電流の方向で制御される回路を備え、そこに TEDS の EEPROM をセンサに組み込みました。電流の流れを変えることで、計測器システムはセンサをアナログ信号モードからデジタル TEDS モードに切り替えます。

図 2: クラス1 IEPE センサ用2線式インタフェース
ほとんどのセンサではクラス 2インタフェースを採用しています。デジタル TEDS 通信を行うのに別のワイヤが必要となります。トランスデューサのアナログ入出力はそのままに、アナログインタフェースに並行するように2線式の TEDS 配線を追加します。こうすることで、増幅器の有無を問わずほとんどのセンサやアクチュエータ(熱電対、RTD、サーミスタ、ブリッジセンサ、電解式化学電池、4~20 mA 電流ループセンサなど)に TEDS を実装できるようになります。実際、クラス 2では、簡単に既存のセンサを改良して様々なパッケージオプションで組み込むことができます。図3には、ブリッジセンサを備えたクラス 2ミックスモードインタフェースの実装例を示しました。

図 3: クラス2 複数ワイヤインタフェース(ブリッジセンサと共に表示)
ミックスモードインタフェース(クラス1もしくはクラス 2)のデジタル部分は、Maxim/Dallas Semiconductor 社の単線プロトコルに基づいたものです。これは非常にシンプルな低コストのマスタ/スレーブシリアル通信プロトコルで、一つのマスタデバイス(例:計測システム)が電力を供給し、決められた通信のタイミングシーケンスに従い単線上の各スレーブノードと通信を行ってデータを返さなければなりません。汎用に広く出回っている単線 EEPROM は、TEDS をセンサに組込むための低コストな2線式のソリューションとして利用できます。Maxim/Dallas Semiconductor 社ではこのような EEPROM を2つ(DS2430 (256ビット)とDS2433 (4 Kビット))製造しています。
仮想 TEDS
ナショナルインスツルメンツと各国のセンサベンダは、センサ用の標準的な記述言語として機能する TEDS の潜在的な利点を強く認識しています。TEDS データ構造は、センサ内に組み込まれた EEPROM 上に TEDS が物理的に存在しているか否かにかかわらず、あらゆるセンサを記述することができます。
仮想 TEDS ファイルは、EEPROM 上ではなくローカルコンピュータか Web 上のデータベースに保存されます。これにより、従来のセンサでもEEPROM を組み込むことなく TEDS が利用できるようになります。仮想 TEDS は、センサ設置環境の制限により、EEPROM 等の電子部品を組み込むのが不可能なアプリケーションでも役立ちます。

図 4. 仮想 TEDS:Web インタフェースを介してアクセス可能
プラグアンドプレイセンサ対応ハードウェア
現在、数多くの企業がプラグアンドプレイセンサを提供し、仮想 TEDS とプラグアンドプレイセンサはこのところ様々なテスト・計測アプリケーションで使用されています。 ナショナルインスツルメンツでは、仮想 TEDS およびプラグアンドプレイセンサ情報の読み込み・書き込みが行えるハードウェアとソフトウェアを提供しています。

図5. プラグアンドプレイセンサ対応システムの構成要素
ナショナルインスツルメンツはこの度プラグアンドプレイセンサ対応のハードウェアを新たに3製品発表しました。各ハードウェアにはプラグアンドプレイセンサとの通信に必要なシリアル回路が組み込まれています。NI SCXI-1314T は NI SCXI-1520ブリッジセンサ入力モジュール用のフロントマウント型端子台です。この端子台は8つの入力チャネルに対応し、プラグアンドプレイセンサと SCXI-1520ユニバーサル入力モジュール間の接続を可能とする TEDS 対応インタフェースとして機能します。SCXI-1314T は、RJ-50イーサネット型コネクタを使って最大8個のブリッジセンサもしくは歪みゲージを簡単に接続するための I/O インタフェースです。

図 6. ナショナルインスツルメンツのプラグアンドプレイセンサ対応ハードウェア
(BNC-2096、SCXI-1314T 端子台、SC-2350 モジュールキャリア)
クラス2のプラグアンドプレイセンサ用にポータブルなデータ集録(DAQ)システムとインタフェースを必要とするような場合には、当社の新型SCC モジュールキャリアがお勧めです。全てのアナログ用 SCC モジュールに対応した NI SC-2350は、TEDS の持つ全ての利点を使用できる小型のポータブルシステムで、比較的少ないチャネルを使用する場合や、システムのサイズを小型化する必要があるユーザに最適です。また、ノート PC 上で構築するポータブルデータ集録システムとしても最適です。
NI BNC-2096はクラス1プラグアンドプレイセンサ(IEPE/加速度計、マイク等)に対応する19インチのラックマウント可能な端子台です。これは弊社の IEPE 対応データ集録ハードウェア(PXI-4461、PXI-4472、SCXI-1530/1など)の端子台となります。BNC-2096を使用することにより、最大16個の IEPE プラグアンドプレイセンサを接続することができます。
プラグアンドプレイセンサ対応ソフトウェア
主要センサベンダとナショナルインスツルメンツでは、共通の TEDS ソフトウェアプラットフォームを使用することにより、IEEE 1451.4に対応したデバイス間でのデータの書き込み/読み取りが確実に行えるよう互換性を確保しています。Sensors Plug&Play ロゴ(図7参照)の付いているデータ集録製品および信号調節製品はどれもプラグアンドプレイセンサ対応製品と互換性があります。

図 7. プラグアンドプレイセンサ対応製品全てに付けられるロゴ(互換性、相互運用性を表している)
テスト・計測システム用の主要ソフトウェアである NI-DAQmx 計測ドライバ、および NI LabVIEW グラフィカル開発ソフトウェアはいずれもアップグレードにより、TEDS 技術が利用できるようになっています。NI-DAQmx 7.2は IEEE 1451.4対応の仮想 TEDS、TEDS センサに完全に対応しています。TEDS 読み取り機能は MAX (Measurement & Automation Explorer)、DAQ アシスタント、LabVIEW 対応 TEDS ライブラリに含まれています。この新機能により、マウスをクリックするだけで複数の仮想 TEDS もしくは TEDS センサからセンサ/TEDS 情報を自動的に読み取ることができます。
NI-DAQmx 計測ドライバ
TEDS 規格は計測モジュールとセンサ間の通信を規定し、NI-DAQmx はセンサのデータを読み取りそれを自動的に工学単位に変換します。これまでのように紙面のデータシートから手作業でセンサパラメータを入力する必要がなくなりました。センサをプラグアンドプレイセンサ対応のハードウェアに接続すると、MAX(Measurement & Automation Explorer )内でボタンを一押しするか、アプリケーション開発環境内の関数呼び出しを行うだけで TEDS センサからデータを取り込むことができます。図8は SCXI-1314T に接続された仮想 TEDS と TEDS センサを検出したり構成するための MAX インタフェースを示したものです。

図 8. SCXI-1314T 用 NI-DAQmx TEDS 構成
MAX は TEDS センサを対話式に検出してコンピュータメモリに取り込むことができますが、LabVIEW の NI-DAQmx 関数を使用することでTEDS 情報をプログラム的に読み取り、書き込み、再設定を行います。LabVIEW で利用できる関数は TEDS 情報をビットストリームとして取り込むこともできます。LabVIEW で TEDS を再設定できることにより、キャリブレーション情報のアップデートを行ったり、センサの物理的な位置などユーザ定義の情報をセンサにデジタル形式で保存することも可能となります。

図 9. NI-DAQmx TEDS サブパレット
LabVIEW 対応 TEDS ライブラリ
NI-DAQmx のTEDS 関数は計測・テストシステムのプログラム的な構成に必要とされる機能を提供しています。高度の TEDS 情報編集および仮想 TEDS ファイルの作成にはもう1セットの関数パレットが準備されています。TEDS センサから TEDS 情報のビットストリームをLabVIEW に読み込んだ後に、この追加関数セットでビットストリームのパーシング(構文解析)を行ったり、新しい TEDS を作成するなど、TEDS に特化した様々な操作が行えるようになります。図10は最上階層にある TEDS パレットとそこで利用できる関数の一例です。

図 10. LabVIEW 対応 TEDS ライブラリの VI パレット
NI-DAQmx と LabVIEW 関数に対応した TEDS ライブラリを使用することで、特定のセンサの TEDS 情報を読み取ったり、適切なセンサテンプレートに基づいて TEDS 情報ビットストリームのパーシングを行なったり、表形式に TEDS 情報を表示するようなアプリケーションが迅速に作成できます。図11に同アプリケーションのダイアグラムを示します。

図 11. TEDS LabVIEW サンプルプログラム
まとめ
IEEE 1451.4 は既存のアナログセンサに高度なプラグアンドプレイ機能を追加するための比較的シンプルで、分かりやすいメカニズムを規定するものです。プラグアンドプレイセンサ対応のハードウェア、ソフトウェア、センサを使用することにより、少数のセンサを使って計測するシステムから数千ものセンサで計測するような多チャネルシステムに至るまで、様々なニーズのセンサ計測において「使いやすさ」、「精度」、「信頼性」 の向上が期待できます。同規格の認可を受け、ナショナルインスツルメンツを含む数多くのベンダが仮想 TEDS、TEDS センサ対応の製品の作製に日々努力しています。
法律関連事項
本チュートリアル(以下「チュートリアル」という)は、National Instruments(以下「NI」という)によって作成されたものです。本チュートリアルは、NIにてサポートされていますが、本チュートリアルの内容に関するテストや検査が完全に行われていない可能性があり、チュートリアルの品質について、もしくは、関連製品およびドライバの各改訂版に対するサポート継続については、何らの保証も適用されません。本チュートリアルは、いかなる保証もなく「作成された状態のまま」で提供されており、ni.com/jpの使用条件に特別に規定されている特定の制約事項に従うものとします。 (http://ni.com/legal/termsofuse/japan/ja/)
