ソースメジャーユニット (SMU) とは?
概要
研究、設計、開発、製造における計測では、ほとんどの場合開発・テスト対象デバイス (DUT) に電力を供給する必要があります。また、多くのアプリケーションではデバイスが使用する電圧や電流を監視して、デバイスの動作の特性を解析したり正しい動作を確認する必要もあります。定電圧または定電流を供給し、関連する電流や電源を読み取るプログラマブル電源1つで、この両方の条件を満たすことが可能な場合もあります。そのようなアプリケーションの多くでは、ミリアンペア単位の感度での電流計測で十分です。
ただし、一般のプログラマブル電源よりも高い精度で、マイクロアンペアレベルの電流感度のソースや計測が必要となることもあります。例えば、マイクロアンペアレベルの電流消費がバッテリ寿命を縮めている電気・電子機器について考えてみます。メーカーは、そのようなデバイスの特性を製造時に評価することが必要です。そのような状況では、マイクロアンペアレベルの感度を持つ高精度電源が最適です。
さらに高い精度やより多くの機能が求められるアプリケーションもあります。半導体の検証と特性解析は、ナノアンペア単位での電流感度が必要なアプリケーションの一例です。より高い精度と速度、電圧のリモートセンシング機能、4象限出力などへの需要が高まると、従来のプログラマブル電源では不十分となります。そのような場合、高精度のローレベルソース/計測が必要ですので、ソースメジャーユニット (SMU) が非常に適しています。
SMU とは、通常1 mV 以下の精度の電圧ソース(供給)と計測分解能に加え、1 μA 未満の電流ソース/計測分解能を提供する高精度の電源ソース計測器です。また、リモートセンシング機能と、バイポーラ電圧と電力のシンク機能の両方を組み込んだ4象限出力が搭載されています。さらに、デバイスのIV特性の判定に使用できる電流と電圧両方のスイープも可能です。そのため、業界で広く採用され、多くの自動テストシステムのコンポーネントとして利用されています。SMU の特定の機能や関連するアプリケーションの詳細については、下記の該当するセクションをご覧ください。
高精度
SMU が標準電源と一線を画す最大の特長は、その高い精度です。精度は、反復性または再生性で定義されます。計測精度について考える際は、感度と確度という2つの特性について考慮する必要があります。
感度
感度とは、計測器が計測(または供給)できる検出可能な最小変化のことをいいます。言いかえると、精度とはデバイスの出力で設定可能または入力で検出可能な最小の増分値ということです。SMU では電圧と電流を設定・読み取りできる範囲が複数用意されているため、標準の電源に比べ高い感度を備えています。例えば、NI PXI-4130電源 SMU には、2A~200 μA までで5つの電流範囲が用意されています。
確度
確度とは、ある特定のソースまたは計測における最大の不確実性のことをいいます。絶対確度は、規格にトレースできる値が基準となっています。一般に SMU のソースおよび計測確度は、設定されている出力の0.1パーセント以下です。例えば、PXI-4130電源 SMUの200 μA 範囲では、0.03パーセントの確度が得られます。
電圧のリモートセンシング
高精度電圧のソースまたは計測を高確度で行う際に問題となるのは、リード線抵抗がテスト対象デバイス(DUT)側の電圧に及ぼす影響です。リード線抵抗は常に存在しますが、長距離の細いワイヤを使用した際に特に大きくなります。通常は数オーム程度ですが、そのような小さな抵抗でも DUT が受ける電圧には大きな影響があります。特に DUT の内部抵抗が小さいほどそれは顕著です。
図1は、電源計測器、リード線、DUT からなる汎用回路図を表しています。この場合のリード線抵抗は、電源と DUT を接続する+と-の両リード線において1Ω と仮定しています。

図1.一般的なプログラマブル電源の接続図
電源が5 Vの出力に設定され、DUTのインピーダンスが1 kΩと仮定した場合、DUTの端子の電圧は以下の式で求めることができます。

上述の例では、電圧は4.99 V です。一部のデバイスでは、このような小さな変化は問題になりません。ただし動作電圧に基づく高精度な特性解析が必要なアプリケーションでは、この誤差が極めて重要となることがあります。また、入力インピーダンスの低いデバイスでは、リード線を通る電圧の変化を大幅に低減することができます。表1は、入力インピーダンスの低い方の値に基づく DUT 側の電圧値を示しています。
| DUT インピーダンス | DUT 電圧 |
| 1 kΩ | 4.99 V |
| 100 Ω | 4.9 V |
| 10 Ω | 4.16 V |
表1.入力インピーダンスに基づく DUT 側の電圧
リード線抵抗による電圧誤差は、リモートセンシングによって解決することができます。これは4線式センシングとも呼ばれます。このテクニックは、電圧を DUT で直接計測しそれに応じて補正を行うものです。この方法は、デジタルマルチメータ(DMM)が4線式抵抗計測を行って抵抗計測からリード線抵抗の影響を取り除くのに似ています。電源にも DMM にも2個の出力端子が余分に搭載されているため、この4線式リモートセンシングが可能となっています。これらの余分な端子は、DUT に直接接続されています。リモートセンシングに使用するワイヤでもリード線抵抗は存在しますが、電圧計測は高インピーダンスであるため電流がワイヤ上を流れることはなく、電圧降下も発生しません。
通常 SMU にはリモートセンシング機能が搭載されていますので、高い電圧感度をフルに活用することができます。「Kelvin sense」とも呼ばれるリモートセンシング機能は NI PXI-4130電源 SMU に搭載されており、ソフトウェアでオン/オフを切り替えることができます。
4象限動作(ソース/シンク)
SMU を特徴づけるもう1つの特性として、出力の柔軟性があります。SMU は4象限動作が可能で、それらは正電圧と正電流(象限1)、負電圧と正電流(象限2)、負電圧と負電流(象限3)、正電圧と負電流(象限4)に対応しています。一般に SMU のデータシートには、各象限に適用される最大電圧と最大電流を示す図2のような4象限図が掲載されています。シンク象限には、連続電力損失を示す実線と、パルスモードで電流をシンク可能な点線が含まれます。SMU の連続電力損失機能は、同じ計測器のパルス電力損失に比べかなり低い場合があるため、この区別は重要です。
4象限動作は、ソースとシンクの両操作が必要なアプリケーションには不可欠な機能です。そのようなアプリケーションには、充電池の充電サイクルテストやデジタル半導体デバイスのピンの出力短絡電流測定などがあります。PXI-4130は、象限IおよびIIIで最大40 Wのソース、象限IIおよびIVで最大10 Wのシンクが可能です。

図2.NI PXI-4130 電源 SMU のチャンネル1の象限図
バイポーラ
電源または SMU が4象限として分類されるためには、正と負両方の電圧を同じ端子からソースできることが条件です。これは、操作において重要な順/逆方向特性の両方を備えたアクティブデバイスの降伏電圧を特性解析する際に重要となります。それらの順/逆方向特性は、負から正の値のスイープ電圧に対応できる出力チャンネルを使って特性解析することができます。NI PXI-4130電源 SMU は、バイポーラ SMU チャンネルで最大+20 V から最小-20 V までのソースが可能です。

図3.順/逆方向降伏電圧特性を示す一般的なツェナーダイオードの IV 曲線
シンク
同様に、電源または SMU が4象限として分類されるには、電力のソースとシンクが可能であることが必要です。電力のソースとは回路に刺激を供給することであり、電力のシンクとは、バッテリや蓄電器、その他の電源などの外部能動部品によって印加される電力を放出することです。4象限電源は、電流をシンクするように設定することで、蓄電器またはバッテリを放電するよう構成できます。例えば、PXI-4130電源 SMU は最大10 W をシンクすることが可能です。
スイープ
様々な電気部品、半導体、カスタムチップ設計などの特性解析と分類が、SMU の主要アプリケーションです。この特性解析を実行する一般的な方法の1つに、DUT にソースされる電圧または電流をスイープする方法があります。この特性解析方法を用いる典型的な例としては、ダイオードおよびトランジスタの IV 曲線のトレーシングがあります。いずれの場合も、電圧は DUT の端子全体でスイープされ、生成された電流が計測されます。
スイープには、線形から対数、カスタムから DC またはパルスまで、様々な種類があります。この SMU は、電圧と電流を最大3000 S/秒でスイープする一方、生成された電圧と電流を計測します。またPXI-4130には、最大6 V と1 A のプログラマブル電源として動作する“ユーティリティ”チャンネルが追加で搭載されています。このチャンネルを使用して、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)に基本電流を供給したり、電界効果トランジスタ(FET)にゲート電圧を供給したりできます。図4は、NI PXI-4130電源 SMU を使用して、NI LabVIEW SignalExpress 環境内で BJT 上の IV 曲線をスイープしている様子を示しています。

図4.PXI-4130 電源 SMU を使用した BJT の IV 特性解析
PXI プログラマブル電源および SMU
ナショナルインスツルメンツでは、PXI-4110 プログラマブル電源と PXI-4130電源 SMU の2種類の高精度ソースを提供しています。3 Uサイズの単体モジュールとして提供されるこれらの計測器は、いずれもほとんどの従来の電源に比べ高い精度を誇っています。図5は、2つの NI 高精度ソースと従来のプログラマブル電源の電流計測感度を比較したものです。

PXI 対応の NI 高精度ソースの仕様および価格については、下記リンクをご覧ください
法律関連事項
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