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ドキュメントタイプ: チュートリアル
NI 製品対応: 有り
発行日: 2008/11/25


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熱電対測定の理論と実測

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概要

このドキュメントは、 「センサ・信号計測の理論と実測ガイド」 ポータルサイトの一部です。

温度および熱電対の概要

温度とは、ある物質を抽出して、その中の粒子の運動エネルギーの平均値を計測し、標準となる目盛の単位「度」で表したものです。温度の測定方法は多岐にわたり、計測器のコストおよび確度も多種多様です。熱電対は、温度の測定に使用される最も一般的なセンサの一つです。比較的低価格でありながら、広い温度範囲で使用できる高確度なセンサだからです。

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熱電対は、2つの異種金属を接触させて、その接点から温度に応じた小さな開回路電圧を発生させることによって作成します。この熱起電力は1821年にトーマス・ゼーベックが発見したことから、彼の名前を取ってゼーベック電圧として知られています。この電圧は温度に関して非線形です。ただし、温度の変化が小さい場合には、電圧はほぼ線形になります。この電圧と温度の関係は次の式で導かれます。

(1)

ΔVが電圧の変化だとすると、Sがゼーベック係数、dTが温度の変化です。

熱電対には複数のタイプがあり、米国規格協会(ANSI:American National Standards Institute)の規定に従って、熱電対の構成を表すアルファベットの大文字によって表されます。例えば、Jタイプの熱電対には、鉄とコンスタンタン(銅とニッケルの合金)が使用されています。その他のタイプには、B、E、K、N、R、S、およびTがあります。

熱電対測定の実施方法

熱電対の基本理論

熱電対測定の実行方法をよりよく理解するためには、まず、熱電対の仕組みを理解する必要があります。このセクションの最初の部分では、熱電対の基本理論を説明します。後半部分では、実際に熱電対を計測器に接続する方法、および熱電対測定の実施例を紹介します。

熱電対によるゼーベック電圧の測定では、単純に熱電対を電圧計などの計測システムに接続すればよいわけではありません。熱電対ワイヤを計測システムに接続すると、その接続点でまた熱電対回路が形成されてしまうためです。

 

図1.Jタイプの熱電対

図1に示された回路を見てみると、Jタイプの熱電対が温度の測定対象であるろうそくの炎に触れています。2つの熱電対ワイヤがデータ集録デバイスの銅のリード線に接続されています。回路には3つの異種金属接点J1、J2、およびJ3があることに注目してください。熱電対の接点J1は、ろうそくの炎の温度に比例するゼーベック電圧を生成します。J2およびJ3にもそれぞれのゼーベック係数があり、データ集録端子の温度に応じた熱電対の電圧を生成してしまいます。J1で生成された電圧を求めるには、J2およびJ3の接点の温度、またこれらの接点の電圧と温度の関係を知る必要があります。次に、電圧の測定値からJ2およびJ3で熱電対によって生成された電圧を差し引くと、J1の電圧が算出できます。

冷接点補償の基本理論
熱電対は、前述の不要な寄生接点にて発生した電圧を補償するために何らかの形式の温度基準を必要とします。最も一般的な方法では、基準の温度を直示式の温度センサで測定し、次に寄生接点の電圧を差し引きます。このプロセスを冷接点補償といいます。冷接点補償の計算は、熱電対の性質を利用することによって単純化できます。

熱電対の中間金属の法則を使用し、簡単な仮定を立てることによって、データ集録システムが測定する電圧が熱電対タイプ、熱電対の電圧、および冷接点温度のみに影響を受けることが分かります。測定した電圧はリード線、冷接点、J2およびJ3の金属の組み合わせとは無関係になります。

熱電対の中間金属の法則によると、図2に示したように、熱電対回路に任意のタイプのワイヤを挿入しても、そのワイヤの両端が同じ温度、つまり等温である限り、出力に何の影響も及ぼしません。

図2.熱電対の中間金属の法則

図3の回路を参照してください。図1で説明した回路と似ていますが、接点J3の直前に短いコンスタンタンのワイヤが挿入されています。

接点J3およびJ4は同じ温度だと仮定すると、熱電対の中間金属の法則により、図3の回路は図1の回路と電気的に等しいと考えられます。したがって、図3の回路から得られる測定結果と図1の回路から得られる測定結果は等しくなります。

図3.追加のリード線を等温領域に挿入

図3の接点J2およびJ4は、同じタイプの金属の組み合わせ(銅-コンスタンタン)です。どちらも等温領域にあるため、J2およびJ4は同じ温度になります。回路内の電流の向きにより、J4からは正のゼーベック電圧が発生し、J2からは負のゼーベック電圧が発生します。また、接点J2とJ4で生成される電圧の絶対値は等しくなります。したがって、これらの接点での電圧は相殺され、誤差はゼロになります。接点J1およびJ3はどちらも鉄-コンスタンタンの接点ですが、接点J1とJ3は温度が異なるため、生成される電圧が異なり、かつ逆方向です。まとめますと、追加のリード線を等温領域に挿入し、接点J2とJ4を同じタイプの金属の組み合わせにしたことにより、電圧の計測値の合計に影響を与える電圧出力を持つ接点がJ1とJ3の2つだと考えることができます。つまり、冷接点補償をするには、J3の温度を測定し、J3で生成された電圧を熱電対測定から差し引きます。

VJx(Ty)を使用して、温度Tyでの接点Jxによって生成される電圧を示した場合、熱電対による計測値VMEASは次の式で表すことができます。

VMEAS = VJ1(TTC ) + VJ3(Tref )          (2)

VMEASはデータ集録デバイスが測定する電圧、TTCはJ1にある熱電対の温度、Trefは基準接点の温度です。

式2では、VJx(Ty)は、ある基準温度に対する温度Tyで生成された電圧を示します。VJ1およびVJ3がどちらも同じ基準温度に対する関数であれば、式2を使用することができます。例えば、NIST(National Institute of Standards and Technology)の熱電対基準表は基準接点が0 °Cに保たれた場合の数値を示します。接点J3はJ1と同じタイプですが、方向が異なるため、VJ3(Tref ) = -VJ1(Tref )となります。VJ1はテスト中の熱電対タイプが生成した電圧であるため、VTCと表すことができます。したがって、式2を次のように書き換えることができます。

VMEAS = VTC (TTC ) - VTC (Tref )      (3)

したがって、VMEASおよびTrefを測定することにより、熱電対の電圧と温度の関係から、熱電対の温度が算出できます。

冷接点補償を実行するには2つの技術があります。ハードウェア補償とソフトウェア補償です。どちらの技術でも、基準接点の温度を直示式センサで測定する必要があります。直示式センサの出力は、測定ポイントの温度のみに依存するものでなければいけません。基準接点の温度測定には、半導体センサ、サーミスタ、およびRTDが通常使用されます。

ハードウェア補償では、可変電圧ソースが回路に挿入され、基準接点電圧を相殺します。可変電圧ソースは、周辺温度に応じた補償電圧を発生させます。このようにして、正しい電圧を印加し、不要な熱起電力を相殺します。これらの寄生電圧が相殺されると、データ集録システムが測定する電圧のみが熱電対の接点からの電圧になります。 ハードウェア補償の主なデメリットは、各熱電対のタイプに対応した別々の補償回路が必要なことです。また、ハードウェア補償は一般的にソフトウェア補償よりも確度が低くなります。

もう一つの方法のソフトウェア補償では、直示式センサで基準接点の温度を測定した後、ソフトウェアによって、測定した電圧に適切な電圧値を追加して、寄生的な熱電対の電圧を排除することができます。式3で示したとおり、測定電圧VMEASは、熱電対の電圧と冷接点電圧の差に等しくなります。

ここまで、ハードウェアとソフトウェアを用いた冷接点補償の理論を説明しました。最後の手順として、計測した電圧値を温度に変換します。しかしながら、熱電対の温度対電圧の関係は線形ではありません。ゼーベック係数は、熱電対が測定する温度範囲など、3つ以上の要素の影響で変動します。このため、多項式を使用して熱電対の電圧対温度曲線の近似値を計算するか、NISTの熱電対基準表(ルックアップテーブル)を使用します。

熱電対を使用した実測例

このセクションでは、NI cDAQ-9172シャーシおよびNI 9211Cシリーズ熱電対モジュール(図4参照)を使用した実測事例を紹介します。

必要な機器は次のとおりです。

- cDAQ-9172、8スロットHi-Speed USBシャーシ、NI CompactDAQ用

- NI 9211、熱電対入力モジュール、4チャンネル、14 S/秒、24ビット、±80 mV

- タイプ熱電対


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図4.NI CompactDAQシステム

NI 9211は高確度熱電対測定を実現するための熱電対入力モジュールです。24ビットのADC、冷接点補償機能、アンチエイリアスフィルタ、および熱電対断線検出機能など、熱電対測定に必要な機能が全て内蔵されています。モジュールには10端子の取り外し可能ネジ留め端子コネクタが装備されており、4つの熱電対入力チャンネルを備えています。各チャンネルには、熱電対の正のリード線を接続できる端子TC+と、熱電対の負のリード線を接続できる端子TC–があります。また、NI 9211にはコモン端子COMがあり、モジュールの絶縁接地基準に内部接続されています。図5は各チャンネルの端子割り当てで、図6は接続回路図です。

図5.端子割り当て

 

 

図6.接続回路図

測定結果の表示:NI LabVIEW

熱電対を計測デバイスに接続すると、LabVIEWグラフィカルプログラミングソフトウェアを使用して、データをコンピュータに転送し、表示/解析できます。

図7は、LabVIEWプログラミング環境において、測定したデータをサンプル表示したところです。


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図7.LabVIEWフロントパネルによる温度データの表示

推奨ハードウェアおよび推奨ソフトウェア

熱電対測定システムの推奨構成

NI CompactDAQ簡単セットアップビデオ(3分)

NI CompactDAQバーチャルツアー

NI LabVIEWとは?

 

熱電対Webイベント、チュートリアルなどのハウツーリソース

熱電対による温度測定(英語)

NIデジタルマルチメータおよびスイッチを使用した高確度温度測定(英語)

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