PC ベースのデータロギングおよび記録テクニックの概要
概要
データのロギングや記録は、計測アプリケーションの中でも一般的なものです。最も基本的なデータロギングでは、物理パラメータや電気パラメータを一定時間にわたり計測し記録します。そのデータは、温度、歪み、変位、フロー、圧力、電圧、電流、抵抗、電力など様々です。一般に実環境のデータロギングアプリケーションでは、信号の集録や記録だけでなく、オンライン解析、オフライン解析、表示、レポート生成、データの共有なども行います。さらに、昨今のデータロギングアプリケーションでは、自動車衝突試験で計測した他のパラメータと連動して記録した音響や映像など他のデータの集録や保存も必要となってきています。
データロギングは、様々なアプリケーションに使用されます。化学者は、実験を行う際に温度や pH、圧力などのデータを記録します。設計エンジニアは、振動、温度、バッテリーレベルなどの性能パラメータを記録して、製品の設計を評価します。土木エンジニアは、橋梁の歪みや負荷を長時間にわたって記録し、安全性を評価します。地質学者は、石油掘削の際に鉱物形成を特定するためにデータロギングを使用します。醸造所では、品質を維持するため、保存/醸造の状態を記録します。
この他にも様々なアプリケーションにデータロギングが使用されていますが、いずれのアプリケーションも同様の条件に基づいています。このホワイトペーパーでは、データロギングの一般的背景について説明し、多くのロギングアプリケーションに共通した機能上のあらゆる条件を検証するとともに、高機能な PC ベースのデータロギングシステムを実装するのに使用できる最新のソフトウェア/ハードウェアオプションを紹介します。

図1. PC ベースのデータロギングアプリケーション ― 冷蔵庫の設計の性能試験
歴史的背景
初期のデータロギングでは、温度計や圧力計などのアナログ計測器から手動で計測を行い、観測日時とともに記録していました。長期間にわたる傾向を見るには、グラフ用紙に計測結果のプロットを手作業で書き入れていました。19世紀終わりには、ストリップチャートが登場し、このプロセスを機械で自動的に行うことが可能となりました。ストリップチャートレコーダは、センサから送られた電気インパルスをアームの機械動作に変換するものです。アームにはペンが取り付けられており、そのペンの下で長い巻紙が一定の速度で移動します。その結果、その期間に計測されたパラメータがペーパーチャートに表示されます。ストリップチャートレコーダは、手作業によるデータロギングに比べると大きな進歩ですが、それでも難点はあります。例えば、紙に書かれたプロットを意味のある工学計測値に変換することは手間のかかる作業であり、データの記録には大量の紙が必要になります。
1970~80年代にかけてパーソナルコンピュータが登場し、データの解析、保存、レポートの生成にコンピュータが使用されるようになりました。データを PC に取り込む必要性が生じたことで、データを記録するための新しい専用デバイス、データロガーが生まれました。データロガーとは、信号の計測、デジタルデータの変換、データの保存などを行うための単体のボックス型計測器です。データは、解析、記録、レポート生成をするため、PC に転送する必要があります。通常データの転送は、フロッピーディスクなどのストレージデバイスを使って手作業でコンピュータに移動するか、シリアルやイーサネットなどの通信リンクを使ってデータロガーと PC を接続するかのいずれかの方法で行っていました。
1990年代には、データロギングがさらに進化し、PC ベースのデータロギングシステムが構築されるようになりました。そのようなシステムは、単体データロガーの集録・保存機能と、PC のアーカイブ、解析、レポート生成、表示機能という両方のメリットを併せ持っています。PC ベースのロギングシステムにより、データロギングプロセスの完全な自動化が可能となりました。データロギングシステムの PC への移行は、以下の3つの要因によって実現したものです。
1.PC の信頼性の向上
2.PC のハードドライブスペースの低価格化
3.単体のデータロガーの計測機能の条件を満たし、それをさらに超える PC ベースの計測ハードウェア
現在の PC ベースのロギングシステムは、多様な計測タイプ、解析機能、レポート生成に対応しています。本ドキュメントの以降のセクションでは、PC ベースのデータロギングシステムを実装するのに必要な機能について説明します。
データロギングの機能条件
15世紀に行われていた手作業による天候パターンの記録から、21世紀の核融合炉試験の実験パラメータのロギングまで、すべてのデータロギングアプリケーションは、図2に示すように、5つの共通した機能条件に分けることができます。集録とは、物理パラメータを実際に計測し、ロギングシステムに取り込むことです。オンライン解析とは、集録中にデータに何らかの処理を施すことを意味し、アラーム、データのスケーリングや制御なども含まれます。データのロギング、つまり保存機能は、当然のことながらデータロギングシステムでは必須です。オフライン解析は、集録したデータから意味ある情報を抽出するため、集録後に行うデータ処理をいいます。最後の機能ブロックには、表示、レポート生成、データの共有が含まれます。これらは全て、データロギングシステムの機能をサポートする「補助的」機能です。以降のセクションでは、それぞれの機能ブロックが、最新の PC ベースのデータロギングシステムでどのように機能しているかを見ていきます。

図2. データロギングシステムの基本要素
集録
集録機能は、全てのデータロギングシステムにおいて、最も重要なコンポーネントの1つです。PC ベースのシステムでは、計測ハードウェアで集録を行います。計測ハードウェアには、図3に示すように、センサ、信号接続、信号処理、A/D変換などのコンポーネントがあります。それについては詳しく説明した資料が他にもありますので、ここでは概要のみを説明します。

図3. PC ベースのデータロギングシステムの計測ハードウェアコンポーネント
センサ
物理現象を電気信号に変換するセンサには、様々なものがあります。熱電対、RTD、サーミスタなどの温度センサは、データロギングアプリケーションで使用される最も一般的なセンサです。その他にも、フローメータ、圧力、歪みゲージ、加速度、マイクロフォンなどのセンサがよく使用されます。センサの正しい選び方や設置方法については、このホワイトペーパーでは説明しません。
接続端子
接続端子とは、それぞれのセンサをロギングシステムに接続する際の計測ハードウェアの端子を意味します。センサの導線をロギングシステムに接続するためのネジ留め式端子は、最も基本的な形です。ネジ留め式端子は、汎用用途、特に容量の少ないスペースに大量の信号を接続する必要がある場合に適しています。ただし、ネジ留め式端子には、接続に時間がかかる上に再構成が難しいというデメリットがあります。図4は、センサの接続や接続解除がより簡単にできるその他の標準接続オプションを示しています。ミニ熱電対コネクタは、熱電対によく使用されるオプションの1つです。BNC および SMB コネクタは、電気シールドによるノイズ対策が必要な場合に広く使用されます。バナナジャックは電流、抵抗、高電圧などの計測にしばしば用いられます。センサメーカーでは、センサに使用できるコネクタオプションを設定していますので、ユーザはそのコネクタを利用可能な計測ハードウェアを自由に選ぶことができます。

図4. 接続端子オプションの例
信号調節
信号調節は、PC ベースのデータロギングシステムの中で最も重要でありながら、最も軽視されているコンポーネントです。ほとんどの信号は、デジタル化する前に何らかの調節が必要です。例えば、熱電対は非常に小さな電圧レベルなので、増幅、フィルタリング、線形化といった処理が必要となります。RTD、サーミスタ、歪みゲージ、加速度計といった他のセンサには、増幅やフィルタリングの他にパワーアンプも必要です。また、システムを高電圧から保護するための絶縁が必要な信号もあります。純粋な電圧信号でも、大規模なコモンモード信号を遮断したり、高電圧を減衰して安全に計測を行うため、特別な回路が必要になる場合があります。スタンドアロンデータロガー1つでは、それら全ての計測を行えるだけの柔軟性を持ち合わせていません。ただし、フロントエンド信号調節の場合、そのような様々な信号を1つのシステムに統合することができます。
信号調節技術は多岐にわたりますので、それぞれの役割や必要性はわかりづらいことがあります。一般的な信号調節とその機能、使用例について、以下に説明します。
・増幅 -- 計測している電圧レベルが非常に小さい場合は、デジタイザの効果を最大限に高めるため、増幅を行います。入力信号を増幅することで、調節済み信号はA/D コンバータ(ADC)の有効範囲をより広く使用でき、より高い計測確度を実現することができます。一般的なセンサで増幅が必要なものは、熱電対と歪みゲージです。
・減衰 -- 減衰は増幅の逆の意味で、デジタル化を行う電圧がデジタイザの入力範囲を超える場合に必要となります。減衰を行うと、調節済みの信号が ADC の範囲内になるよう、入力信号が分割されます。10 V を超える電圧を計測する場合に、減衰が必要です。
・絶縁 -- デジタイザの範囲を超える電圧信号は、計測システムやオペレータに損傷を与える場合があります。そのため、絶縁は通常減衰を伴って行い、危険な電圧や電圧スパイクからシステムやユーザを保護します。また、センサが計測センサ(エンジンに備え付けた熱電対など)とは別の電気接地面にある場合も、絶縁が必要となる場合があります。
・マルチプレクス -- 一般に、デジタイザはデータ集録システムの中でも最も高価な部分です。マルチプレクスを行うと、複数の信号を1つのデジタイザにルーティングして、手頃なコストでシステムの信号数を大幅に拡張することができます。マルチプレクスは、あらゆる多チャンネルアプリケーションで必要です。
・フィルタリング -- フィルタリングは、不要な周波数成分を信号から取り除いて、エイリアスを防ぎ、信号ノイズを軽減するために必要です。熱電対計測では、ローパスフィルタを使って信号から電力線ノイズを取り除く必要があります。振動計測の場合、高周波数のローパスフィルタを使用して、集録システムの範囲を超える高周波数成分を取り除くことが必要になります。
・励起 -- RTD、歪みゲージ、加速度計などの多くのセンサは、励起を行う必要があります。励起信号は、センサのタイプによって電圧または電流のいずれかになります。
・線形化 -- センサのタイプによっては、計測している物理量に対し線形でない電圧信号を生成するものがあります。線形化とは、センサからの信号を物理計測値として解釈するプロセスです。それをするには、信号調節を実行するか、ソフトウェアを介して行います。熱電対は、線形化が必要なセンサの典型的な例です。
・冷接点補償 -- 熱電対計測で必要なもう1つの技術が、冷接点補償(CJC)です。熱電対がデータ集録システムに接続されている場合、熱電対で計測している真の温度を計算するためには、接続の温度を知る必要があります。接続部分に CJC センサが内蔵されていることが必要です。
・同時サンプリング -- 複数の信号を全く同時に計測することが重要な場合、同時サンプリングが必要となります。フロントエンド信号調節を行うと、そのような機能を備えたデジタイザを購入するよりも、はるかにコスト効率の高い同時サンプリングソリューションを実現できます。同時サンプリングが必要な一般的なアプリケーションとしては、振動計測や位相差計測などがあります。
ほとんどのセンサでは、上記のような信号調節技術をいくつか組み合わせて使用します。繰り返しになりますが、増幅、線形化、冷接点補償、フィルタリング、場合によっては絶縁が必要とされる熱電対はその典型的な例です。理想としては、アプリケーションに必要な信号調節のタイプを選ぶことができるのが良いデータロギングシステムです。フロントエンド信号調節がオプションとなっているシステムもありますが、他のシステムでは、必要な計測を行うのにフロントエンド信号調節は必要不可欠です。下記のいずれかを使用する予定がある場合は、計測システムにフロントエンド信号調節が必要です。
熱電対、RTD、サーミスタ、歪みゲージ、LVDT、加速度計、スイッチ、マルチプレクス、低電圧/高電圧混合信号、電流入力、抵抗入力
変換
物理現象を電気信号に変換し適切な調節を行ったら、アナログの電気信号をデジタル値に変換して、その値をコンピュータに戻す作業を行います。A/D 変換は、プラグインデータ集録(DAQ)ボードを使用して行うか、調節機能と接続機能を備えた単一のパッケージで行います。
センサ、信号接続、信号調節、A/D 変換を組み合わせたものが、データロギングシステムの計測ハードウェア部分となります。PC ベースのシステムでは、計測ハードウェアの構成と制御はソフトウェアで行います。その場合、データロギングシステム内の全てのコンポーネントとスムーズに統合するよう設計されたソフトウェアを使用することが重要です。
オンライン解析
一般的なデータロギングシステムにおける次の機能コンポーネントは、オンライン解析です。PC ベースのシステムでは、オンライン解析はソフトウェアを使って行います。様々なデータロギングアプリケーションで、あらゆる種類のオンライン解析が必要となることがあります。その中で最も一般的なものを以下に説明します。
チャンネルのスケーリングとは、集録システムから返された未処理のバイナリ値を、適切な工学単位のスケール済み計測値に変換することです。一例として、熱電対の読み取り値からの温度計算(摂氏)があります。デジタイザは熱電対電圧と冷接点センサ電圧のバイナリ計測値を返します。するとソフトウェアがそのバイナリ計測値を電圧に変換し、次に熱電対の変換公式を使って温度を計算します。歪みゲージ、RTD、加速度計などにも、同様のチャンネルスケーリングルーチンが使用されます。最近の PC ベースの計測ソフトウェアは、ほとんどのスケーリング関数を自動で処理します。
もう1つの重要なオンライン解析関数に、アラーム/イベント管理関数があります。これは、一般にチャンネルを監視して限度値を超えた時に何らかの通知を行うものです。通知の方法は、警告ランプの点灯といったシンプルなものから、メールを送信して問題に関する情報を伝えるといったものまで様々です。またアラームには、特定のイベントへの自動応答も含まれます。例えば、油温が一定の限度値を超えた際に監視中のマシンを停止させるような場合です。
異なるデータロギングアプリケーションには、様々なオンライン解析関数が必要になることがあります。その中には、フィードバック制御システムや高度信号解析なども含まれます。そのような多様な条件に対応できる柔軟性を備えているのは、PC ベースのデータロギングシステムだけです。
ロギングとストレージ
ロギング(ストレージ)機能ブロックは、全てのデータロギングシステムに必要なものです。データの保存方法は、システムによって様々です。ストリップチャートレコーダでは紙を使いますが、従来型のデータロガーでは不揮発性の内部メモリ、フロッピーディスク、その他多様なメディアを使用できます。PC ベースのデータロギングシステムは、通常 PC のハードドライブを使用しますが、テープドライブや、ネットワークドライブ、RAID ドライブ、その他の非標準オプションも使用することができます。
PC ベースのデータロギングシステムにおいて、ソフトウェアの役割は特に重要です。ロギングソフトウェアによって、データの保存方法、ディスクへのデータの書き込み速度、ディスクスペースの効率的な利用などが決まります。また、データ形式の変更、データのアーカイブ、データベースへのアクセスといったデータ管理機能も備わっています。
データのストレージ形式は、データロギングシステムの性能や使い易さに大きく関わってきます。データロギングシステムにおけるストレージには、一般的に ASCII テキストファイル、バイナリファイル、データベースの3つの形式があります。
ASCII テキストファイルは、最も一般的で柔軟性の高いデータストレージ方式です。データロギングアプリケーションのテキストファイルは、ヘッダのセクションとデータの列に分かれています。ヘッダセクションには、チャンネル名、単位、テスト装置、ユーザのコメントなどが書かれています。最初のデータ列は通常各サンプルのタイムスタンプで、以降はロギングする各チャンネルの列が続きます。テキストファイルはほとんど全てのソフトウェアパッケージで開いたりインポートしたりできるので便利です。別のオペレーティングシステムへの転送も簡単です。ただしテキストファイルには、ディスクスペースを非効率的に消費し、ファイルの読み取りや書き込みの処理に余分なオーバーヘッドを要するといった欠点があります。ASCII テキストファイルは、集録速度が低く、ログする総データ量が比較的少なく、別のソフトウェアアプリケーションとデータを簡単に共有可能であることが必要な場合によく使用されます。
バイナリファイルは、最も効率的なデータストレージ方式です。バイナリファイルを使用した場合、コンピュータがデータの保存に使用する生バイトが、そのままファイルに書き込まれます。このデータは、同じ情報を ASCII テキスト形式で書いた場合に比べはるかに少ないスペースしか使用しません。また、必要とされるプロセッサのオーバーヘッドもテキストよりかなり少なくすみます。ただし、バイナリファイルは MS Excel などの一般的なソフトウェアアプリケーションでは表示することができません。ソフトウェアルーチンによって解釈可能なデータに変換する必要があります。PC ベースのデータロギングシステムでは、適切な工学単位に変換されたスケール済みデータか、デジタイザから返された生のバイナリ値のいずれかをログすることができます。16ビット DAQ から返された各サンプルのA/D 変換を表す生のバイナリ値は、16ビット、つまり2バイトのメモリを消費します。ロギングソフトウェアのチャンネルスケーリングルーチンが、この生データを計測した物理値を表す実数に自動で変換します。通常スケール済みのデータは、データロギングソフトウェアの内部で倍精度浮動小数点値として処理されます。倍精度浮動小数点値は、ほとんどのコンピュータシステムで8バイトのメモリを消費します。
高速データロギングシステムの中には生のバイナリ値とともに、後でデータをスケールする際に必要となるスケーリング定数をディスクに記録するものもあります。図5は、生のバイナリ、スケール済みのバイナリ、ASCII テキストの各データ間の関係を示しています。バイナリファイルでは、使用するスペースが少なく、ディスクへのストリーミングの速度が大幅に向上します。生のバイナリファイルは、同じ情報を含むテキストファイルに比べ10分の1以下のサイズです。ただしバイナリファイルには、別のアプリケーションで共有する際に他の形式に変換しなければならないというデメリットがあります。

図5. データストレージファイルサイズの例
多くのデータロギングソフトウェアパッケージでは、データをデータベースに保存します。一般的にデータベースは、データの挿入や抽出が可能な構造を持つバイナリファイルです。大量のデータを効率よく処理し、全てをメモリにロードせずにデータベースの情報を検索できるよう最適化されています。また、多くのデータベースはバックアップやデータのアーカイブ、複数のユーザによるアクセスも可能となっています。通常はソフトウェアメソッドにより、別のソフトウェアパッケージにデータをインポートして解析やレポート生成が行えるようになっています。データベースは、あらゆる意味で PC ベースのデータロギングシステムにおける理想的なストレージ形式です。ただしデータベースの利用には、複雑になるということと、一から構築するのが難しいという2つのデメリットがあります。
データロギングには、様々なタイプのストレージメディアが使用されます。単体のデータロガーでは、不揮発性のオンボードメモリ、フロッピーディスク、PCMCIA メモリカード、テープ、その他様々なオプションを使用できます。PC ベースのデータロギングシステムは、多くの場合 PC の内部ハードドライブを使用します。それは、ハードドライブの信頼性が高まり容量も増えてきたためです。現在では 40 GB 以上のハードドライブが簡単に手に入りますので、最も経済的なストレージデバイスの1つとなっています。ただしローカルのハードドライブに保存したデータは、定期的にバックアップを取るかアーカイブするといいでしょう。
高速データロギングアプリケーション(1 Mサンプル/秒以上)は、一般的な PC のハードドライブの書き込み速度を上回りつつあります。PC ベースのロギングシステムの場合、ロギングソフトウェアや計測ハードウェアにはほとんど変更を加えなくても、より高性能なストレージデバイスやコンピュータにアップグレードすることができるというメリットがあります。高性能ストレージデバイスの一例として、RAID(redundant array of independent disks)コントローラがあります。RAID コントローラは、複数のハードドライブを同時に使用して、ディスクへのストリーミング速度を相乗的に高めるとともに、データの整合性を向上させるものです。また、高速データロギングに使用されるもう1つのタイプのストレージデバイスとして、オーディオビジュアル(AV)ドライブがあります。AV ドライブは、大量の音響/映像情報をディスクにストリーミングできるよう最適化されていますので、高性能なデータロギングアプリケーションにも非常に適しています。また、DAQ デバイスから PC の PCI バス経由でストレージデバイスに直接データをストリーミングするためのカスタムハードウェアも、いくつかのメーカーから発売されています。そのようなデバイスのストリーミング速度は、利用可能な PCI バスの帯域幅によって制約を受けます。たいていのコンピュータシステムで、理論上の最高速度は 132 Mバイト/秒となっています。
オフライン解析
オフライン解析とは、集録済みのデータから重要な情報を抽出するため、数式処理関数を実行することです。オフライン解析には、計測したパラメータの基本統計の計算から、信号の周波数成分や次数解析といった高度な関数まで、様々なものがあります。オフライン解析は、データロギングアプリケーションの他の部分に統合することも、単体の解析ソフトウェアパッケージを介して単独で実行することもできます。時には、レポート生成、履歴表示、データ共有などの関数と組み合わせることもあります。
表示
多くのデータロギングアプリケーションでは、記録した計測結果を表示するための何らかの手段が必要です。表示関数は、さらにライブデータの表示と履歴データの表示に分けられます。集録しているデータをそのまま表示する場合は、ライブデータの表示が必要となります。多くの単体のデータロガーには、ライブデータ表示機能が組み込まれています。履歴データは、以前に集録したデータを表示するものです。ほとんどの単体のデータロガーの場合、履歴データを見るにはデータを PC に転送する必要があります。PC ベースのデータロギングアプリケーションでは、ライブ表示と履歴表示を同じユーザインタフェースに組み込んで使用します。データ表示ユーティリティには、直感的なユーザインタフェース、スクロールや拡大機能、カーソル、一般的なカスタマイズ機能などが搭載されています。図6は、市販ソフトウェアの一般的な履歴データ表示機能の例を示しています。

図6. ナショナルインスツルメンツの VI Logger ソフトウェアの履歴データ表示機能の例
レポート生成
レポート生成は、データロギングアプリケーションの一環としてみなされないことも少なくありませんが、現実には、ほとんどのデータロギングアプリケーションで何らかのレポート生成機能が必要になります。記録したデータは、当然のことながら誰かが解釈可能な状態で見る必要があります。レポート生成機能は、効率を高めるため PC ベースのデータロギングアプリケーションに組み込むことができます。指定のレポートを定期的に生成し、データを必要とする人へ配布するようロギングアプリケーションを構築することも可能です。市販のソフトウェアの中には、データを解析し計測結果のレポートを生成する高度な機能を備えた高性能なものもあります。図7は、市販パッケージに搭載されているレポート生成機能の例を示しています。レポート生成用のソフトウェアを選ぶ際は、データロギングソフトウェアの他の部分と緊密に統合していることを確認してください。レポート生成アプリケーションに直接データを渡して自動でレポート生成できるロギングソフトウェアがあればベストです。

図7. ナショナルインスツルメンツの DIAdem ソフトウェアを使用した高度なレポート生成機能
データの共有とパブリッシュ
昨今のデータロギングソフトウェアに搭載されているネットワーク機能を利用すれば、コンピュータサイエンスの深い知識がなくてもデータの共有やネットワークへのパブリッシュが可能です。ロギングアプリケーションは、集録したライブデータをそのままネットワークにパブリッシュしたり、生データや解析結果を定期的にEメール送信したり、レポートを自動で Web ページに掲載したりするようにセットアップすることができます。
広く分散化されたデータロギングアプリケーションの場合、各ロギングノードが計測結果をネットワークにパブリッシュし、メインコンピュータが中心的な収集装置として機能します。中央コンピュータは各ノードから計測値を集め、それらをまとめて解析を行い、結果を永久保管用に記録して、データ解析結果のレポートを定期的に生成します。
データロギングシステム
ここまでデータロギングシステムの各機能コンポーネントを紹介してきましたが、これらのコンポーネントを実際にシステムに実装する方法について説明します。PC ベースのデータロギングシステムは、全てソフトウェアとハードウェアから構成されています。計測ハードウェアはロギングアプリケーションの集録部分を担います。ハードウェアは、チャンネル数、センサタイプ、集録速度、計測確度などに基づいて選びます。計測ソフトウェアは、ハードウェアの制御の他に、オンライン解析、ロギング、オフライン解析、表示、レポート生成、データの共有などを行います。
ソフトウェアのオプション
PC ベースのデータロギングシステムを構築するにあたって、ソフトウェアの選択は非常に重要なステップです。柔軟で生産性の高いソリューションを構築するには、ソフトウェアが大きな鍵を握ります。計測ソフトウェアは、ハードウェアとシームレスに統合する設計となっている必要があります。データを集録してディスクに記録するという基本タスク以外に、計測ハードウェアの構成や、チャンネルからのデータスケーリング、システム校正などを行うためのツールも必要です。またソフトウェアは、レポート生成や解析、アーカイブ、共有など、アプリケーションの全ての面を処理しなければなりません。PC ベースのデータロギングアプリケーションに使用できる一般的なソフトウェアには、プログラミング不要なターンキーソフトウェアと、アプリケーション開発環境の2つのカテゴリがあります。
ターンキーパッケージは、お客様の計測ハードウェアと通信することでデータを集録・記録する即実行可能なデータロギングソフトウェアです。それらのアプリケーションは、ロギングタスクを構成し、短時間で実行を開始できる使いやすい環境を提供します。優れたターンキーデータロギングパッケージには、次のような特長があります。
・直感的なユーザインタフェース – ソフトウェアの構成は、ヘルプ機能やチュートリアルを完備した、ウィンドウによるメニュー方式のインタフェースによって行います。
・データの自動ストレージ/アーカイブ – データのストレージは、全てのデータロギングソフトウェアパッケージの主要機能の1つです。効率的な方法でデータを自動で保存し、データのバックアップやアーカイブの機能も備えていることが重要です。
・データのエクスポート機能 – 少なくともデータを ASCII テキストファイルにエクスポートする機能があれば、それをさらに他のパッケージにインポートすることができます。より高度なデータロギングソフトウェアパッケージでは、データを一般的なデータベースや解析プログラムに自動的に転送することも可能です。
・アラーム/イベント管理 – データロギングソフトウェアには、アラームやイベントの処理機能が必要です。例えば、信号が限度範囲外、範囲内、あるいは限度値の上または下になったことを検出する機能です。アラームが発生すると、ソフトウェアはEメール、呼び出し、デジタル/アナログ出力など、いくつかのアクションを起こします。
・表示/トレンディングツール – 全てのターンキーロギングソフトウェアパッケージには、データのスクロールや関心領域の拡大、長期的トレンドの把握などを行うため、ライブデータと履歴データの両方を表示できる優れたインタフェースが必要です。
プログラミング不要なソフトウェアの場合、カスタマイズ機能でもない限り、あらかじめ用意されている機能しか使うことができないという欠点があります。計測のニーズに変化が生じて別のタイプの信号を追加することが必要になった場合、ソフトウェアがその計測タイプを処理できないとなると非常に困ります。また、オフライン解析、レポート生成、ネットワーク接続などの機能をデータロギングアプリケーションに組み込むにも、クローズドタイプのターンキーソフトウェアでは容易ではありません。一方で、一般的なアプリケーション開発ツールを使ったカスタマイズ機能を備えたターンキーソフトウェアもあります。そのようなカスタマイズ可能なデータロギングソフトウェアパッケージなら両方のいいところを持ち合わせていますので、ロギングアプリケーションを短時間で立ち上げることができ、後になってより高度な機能を組み込むことも可能です。
アプリケーション開発ツールは、PC ベースのデータロギングシステムを開発するためのもう1つのオプションです。開発ツールには、テキストベースのプログラミング言語からグラフィカルプログラミング環境まで、様々なものがあります。図8は、グラフィカル開発環境で開発したデータロギングアプリケーションのソフトウェアコードの例を示しています。開発ツールを使うと、ユーザ独自のカスタムデータロギングアプリケーションを作成することができます。また、ニーズの変化に応じてアプリケーションに変更を加えたり、解析やレポート生成のカスタム機能をロギングアプリケーションに組み込んだり、データロギングシステム全体を自動化したりすることも可能となります。

図8. ナショナルインスツルメンツの LabVIEW を使って作成したデータロギングのグラフィカルプログラミングの例
データロギングアプリケーションを開発するには、高機能な PC ベースのロギングシステムを作成するのに求められる機能を全て備えた開発環境を選ぶ必要があります。アプリケーション開発ツールを選ぶにあたって考慮すべき点を以下に挙げます。
・多彩なグラフィカルユーザインタフェースコンポーネント – グラフ、ディスプレイ、制御器などのユーザインタフェースコンポーネントを一から作るのは、大変時間のかかる作業です。質の高いユーザインタフェースコンポーネントを取り揃えた開発環境を選ぶことが重要です。
・計測ハードウェアとの緊密な統合 – ご使用の計測ハードウェアに対応したソフトウェアを使用する必要があります。統合性の高いソフトウェアを使用すれば開発時間を大幅に短縮できるばかりでなく、信頼性の高い計測機能を実現することができます。
・解析関数 – データロギングソフトウェアアプリケーションをカスタム開発する主な目的として、高度な解析関数を組み込むことが挙げられます。優れたアプリケーション開発環境には、あらゆるニーズに対応した広範な解析関数が搭載されています。
・ネットワーク接続機能 – 今日のネットワーク環境では、データロギングアプリケーションを Web に接続する機能が非常に重要です。計測結果をネットワークにスムーズにパブリッシュできるツールを搭載したアプリケーション開発ソフトウェアを選ぶ必要があります。
・レポート生成 – 自動でレポート生成する機能や、外部レポート生成パッケージをプログラムで制御できる機能のあるアプリケーション開発環境を使用することが重要です。
ターンキーソフトウェアと開発ツールのどちらを選ぶかは、データロギングアプリケーションの複雑さや求められるカスタマイズの程度によって決まります。どちらを選ぶにしても、計測システムとコンピュータの接続を専門に扱い、質の高いサービスとサポートを提供するソフトウェアベンダから購入することは非常に重要です。
ハードウェアのオプション
データロギングシステムに使用できるハードウェアプラットフォームには、多くの種類があります。採用すべきプラットフォームは、サイズや動作環境、設置状況などにより異なります。無限に近い組み合わせがありますが、PC ベースのデータロギング用プラットフォームは、ポータブル、デスクトップ、ラックマウント/工業用、分散型の4つのカテゴリに分けられます。PC ベースのデータロギングシステムの主なメリットとして、1つのデータロギングソフトウェアで全てのプラットフォームに対応できるという点があります。
ポータブルデータロギングソリューションは、車載データロギングや機器のフィールドテストなど、あらゆるアプリケーションで使用されます。PC ベースのポータブルソリューションでは、可搬性の高いラップトップコンピュータと計測ハードウェアを使用します。図9は、ナショナルインスツルメンツのポータブルデータロギングシステムを示しています。デジタイザはプラグイン PCMCIA データ集録カードで、信号調節や接続を行うためのラップトップサイズの小さなボックスにケーブル接続されています。ポータブルシステムは、サイズ上の制約によりチャンネル数は40以下に制限されています。

図9. PCベースのポータブルデータロギングシステム
図3に示すようなデスクトップシステムでは、標準のデスクトップ PC に対応するよう設計された計測ハードウェアを使用しています。デスクトップシステムは、検証試験や新製品設計など、広範なデータロギングアプリケーションに適しています。固定されたデスクトップシステムはサイズの制約をあまり受けないため、信号接続や信号調節などの関数は、様々なタイプのセンサ/信号を計測する機能を備え、多数のチャンネルをログするよう簡単に拡張できるモジュール式のフロントエンド信号調節システムで実行します。
ただしデスクトップシステムは、場所を取りすぎたり、大型の実験室や製造施設のような環境には適さないこともあります。そのような場合は、PXI または CompactPCI 規格に基づいたモジュール式の工業用 PC を使った小型ですっきりしたソリューションの方が適切かもしれません。図10は、PXI をベースにしたデータロギングシステムを示しています。1つのモジュール式システムに、PC、DAQ モジュール、信号調節、接続端子が含まれています。そのようなシステムはラックマウントに対応した設計となっていますので、製造や研究などの環境にすっきりと収まります。

図10. PCベースのラックマウント式工業用データロギングシステム
最後に、システムによっては分散化することが必要な場合もあります。例えば化学工場の性能パラメータを記録するなど、施設周辺の複数の場所からデータをログする必要がある場合に分散化が必要になります。分散型のロギングシステムは、コンパクトなサイズであると同時に、広い温度範囲で動作可能である必要があります。分散型ロギングシステムでは、通常 RS-485 やイーサネットなどの通信リンクを介して、複数の計測ノードが中央コンピュータと通信します。図11は、分散型ロギングシステムの例を示します。

図11. 分散型データロギングシステム
どのようなロギングプラットフォームを選ぶかはユーザのデータロギングシステムのニーズにより異なります。システムによっては、複数のプラットフォームを同時に使用することが必要な場合もあります。正しく設計されたソフトウェアやハードウェアを使用したデータロギングシステムなら、少チャンネル数のシンプルな実験用システムから、非常にチャンネル数の多い分散型工業用ロギングシステムまで、あらゆるシステムに対応することができます。
まとめと関連情報
データロギングを使用して、気象パターンから工場の機能まで、あらゆる現象を評価することができます。PC ベースのデータロギングシステムは、特に優れた柔軟性、カスタマイズ性能、統合性を備えています。データロギングシステムを構成する際は、集録、オンライン解析、ロギング、オフライン解析、表示、レポート生成、データ共有などの条件を考慮する必要があります。そのような条件に基づき、ニーズに合ったソフトウェアやハードウェアを選ぶことが重要です。
関連情報
参考資料:ナショナルインスツルメンツのデータロギング トップページ
法律関連事項
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