ワイヤレスのメリット: ワイヤレスリモート監視のメリットと難題
概要
ワイヤレス技術を利用したリモート監視の研究には、多くの時間と費用が投資されてきました。それでも、ワイヤレス技術は産業界でようやく実用化され始めたばかりです。ケーブルを使用しないリモート監視アプリケーションには多くのメリットがありますが、同時に多くの難題があります。Wi-FiやZigBeeなどの規格が進化を続ける中で、そのような難題への対策も進められています。このドキュメントでは、ワイヤレス技術のこれまでの発展について述べるとともに、ワイヤレスリモート監視アプリケーションを設計する上での注意事項について説明します。
ワイヤレスリモート監視のメリット
有線の代わりにワイヤレスネットワークを選ぶ主な理由としては、ケーブルと配線を取り除くことによる柔軟性とコストの削減が挙げられます。
柔軟性
ケーブルや配線がないため、ワイヤレス監視システムは当然のことながら従来型ネットワークより柔軟です。固定されたネットワーク構成やシステムセットアップの制約を受けないため、追加やアップグレード、拡張が自由にできます。つまり計測のセットアップにかかる時間や手間を省けるため、より多くの計測をシステムに取り入れ、より詳細な分析をすることが可能です。また、ワイヤレスシステムなら可搬性も高まります。フィールド計測は時間とコストがかかりますが、ケーブルのないセンサならセットアップにかかる時間を大幅に短縮できます。
多くのアプリケーションでは、配線とケーブルの使用がそもそも現実的ではありません。例えば、クレーンや石油掘削器の先端部などの可動・回転装置には、フェストゥーンケーブルやスリップリングの使用が必須です。そのような装置の追加により、システムが複雑化するだけでなく定期的なメンテナンスが必要になります。特にスリップリングは摩耗しやすく、信号品位の劣化の原因となります。ワイヤレスシステムなら、計測対象とともにセンサ自体が動いたり回転したりできるため、そのような装置を追加する必要がありません。また、A/Dコンバータを実際の信号源に近づけることで、ノイズの影響を少なくすることができます。
費用
ワイヤレスリモート監視システムの柔軟性は、大幅なコスト削減につながります例えば、機械設備の状態が工場の正常稼働に重大な影響を与える場合を想定してみてください。コストの削減は、ダウンタイムの短縮と設置作業の削減により実現できます。設備診断計測を多く行うことで、機械設備の状態がより正確に把握でき、プロセスも効率化されます。センサを増やすことで、部品が劣化するタイミングを見計らうことができますので、ダウンタイムの短縮につながります。より多くのデータがあれば、問題の発生を防ぐことができ、発生しても迅速に対応することができます。ただし、これは計測の追加によってかかるコストと比較して考える必要があります。新しい監視システムの投資収益率(ROI)を計算する際、工業環境におけるケーブルや配線のコストは無視できません。1つの工場における技術費用、材料費、システムダウンタイム、ケーブル費用だけで1フィートあたり数十ドルから数千ドルもかかることを考慮する必要があります。そのような計測が分散されている場合、センサの追加にかかるコストは診断のメリットを簡単に上回ってしまいます。ワイヤレス監視システムなら、少ない費用で設置と保守を行うことができます。
ワイヤレスリモート監視の難題
用化はなかなか進みません。ワイヤレス計測システムが広く普及するには、セキュリティ、信頼性、統合性、および電源という難題を解決する必要があるためです。
セキュリティと信頼性
セキュリティは、ワイヤレス技術の採用を検討する際に最も問題となる部分です。その主な原因として挙げられるのが、未許可のアクセス禁止を徹底しなかったWired Equivalent Privacy (WEP)など初期のワイヤレス規格の不備です。ワイヤレス技術が広く利用されるためには、アクセス権の管理と暗号化というネットワークセキュリティの2つの要素での対応が求められます。
ワイヤレスネットワークはデータが空気中を飛ぶため、イーサネットなどの有線ネットワークに比べてアクセスが簡単です。ただし、ワイヤレスネットワークは多くの方法でアクセスを制限することができます。ZigBeeなどの低電力パーソナルエリアネットワーク(PAN)は、対象範囲が限られているため物理的なサービスエリアを制限するのは簡単です。大規模システムには、拡張可能認証プロトコル(EAP)に基づいたワイヤレスネットワークの認証が可能なIEEE 802.11Xなどの規格が適しています。ネットワーク上のクライアントは、認証を受けなければネットワークへのアクセスを許可されません。この他にも、権限のないネットワークアクセスを防ぐ方法がいくつかあります。ワイヤレスネットワークセキュリティを確保する方法には、MAC/IPアドレスによる認証やサービスセットID(SSID)による抑制があります。
権限のないユーザがデータにアクセスできたとしても、データが理解不能な場合もあります。ワイヤレスネットワークにおけるデータの暗号化は、過去10年ほどの間に128ビット暗号化にまで進化を遂げました。現在ではAES(Advanced Encryption Standard)がNIST標準となっており、全ての米国政府機関での採用が義務付けられています。ZigBeeにもWi-Fiにも、128ビット暗号化のオプションがあります。ただし、多くのワイヤレスユーザはこのような新しい認証技術や暗号化技術を活用していません。認知が不十分であることが、現在のワイヤレスセキュリティにおける最大の問題と言えます。
既存のシステムとの統合
これまでワイヤレスのセキュリティ問題は、専用のネットワークプロトコルで対処してきました。専用ネットワークは、詳細が公開されていないため安全性が高いとされています。この方法の問題点は2つあります。1つは、そのようなプロトコルの詳細が漏えいした場合、そのシステム全体に関する情報が明らかになってしまうことです。もう1つは、専用ネットワークは既存の有線システムとの統合が困難です。専用プロトコルを採用すると、特定のメーカーのネットワークコンポーネントしか使用できなくなり、既存のシステムとの相互操作性が保てない可能性があります。これはソフトウェアについても同様です。データロギングソフトウェアは一般的には内部が公開されていないため、変更は不可能ではありませんが困難です。ベンダ定義によるソリューションを使用することは、将来そのベンダがなくなる可能性を考えると大きなリスクがあります。規格に基づいたワイヤレスソリューションなら、オプションがいくつかありますので、そのようなリスクを軽減することができます。
規格に基づくワイヤレスネットワークは、低コストであるだけでなく、様々なメーカーの交換可能製品が利用でき、成功事例が確立されているなどのメリットがあります。また、IEEE 802.11などの規格は、イーサネットベースのシステムに簡単に組み込むことができます。オープンソフトウェアシステムを採用することも、統合性と拡張性の点では同じく重要です。例えばNI LabVIEWは専用と規格ベースの両方のワイヤレスネットワークと通信することが可能です。
バッテリ寿命
ワイヤレスネットワークの難題の3つめは電源ですが、これはアプリケーションにより異なります。例えば化学工場では、ネットワークを接続するよりも電源をつなげるほうが容易なことがあります。そのような場合は、ネットワークケーブルを取り除くことの方が意味があります。その他のアプリケーションでは、ワイヤレスネットワークは完全にケーブルを取り払う必要があります。ZigBeeと802.15.4は、遠く離れた場所での分散監視アプリケーションに利用できるよう設計されています。ワイヤレスセンサは、収集するデータの量と転送に使用する周波数を制限すれば、何年もバッテリを替えずに作動することができます。ソーラーパネルや振動を電力に変えるマイクロ発電機などの代替エネルギー源も、研究が進められています。
ワイヤレスの今後
Venture Development Corporation社の調査によると、ワイヤレス計測デバイス/サービスの世界市場は2012年1までに15億ドルに達する見通しとなっています。

ネットワークインタフェースクラスにより分類した工業用監視・制御アプリケーションの調査におけるワイヤレス(RF/マイクロ波)製品の世界出荷数の現状と予測1
最新のワイヤレスネットワークプロトコルでは、初期の技術に伴う問題点を克服しています。Wi-Fi、ZigBeeなどの規格やLabVIEWなどのオープンソフトウェアを利用することで、ワイヤレスリモート監視は今後さらなる普及が見込まれます。
参考文献
1James K. Taylor Venture Development Corporation. The Worldwide Market for RF/Microwave Wireless Monitoring and Control Products in Discrete and Process Manufacturing. March 2008.
法律関連事項
本チュートリアル(以下「チュートリアル」という)は、National Instruments(以下「NI」という)によって作成されたものです。本チュートリアルは、NIにてサポートされていますが、本チュートリアルの内容に関するテストや検査が完全に行われていない可能性があり、チュートリアルの品質について、もしくは、関連製品およびドライバの各改訂版に対するサポート継続については、何らの保証も適用されません。本チュートリアルは、いかなる保証もなく「作成された状態のまま」で提供されており、ni.com/jpの使用条件に特別に規定されている特定の制約事項に従うものとします。 (http://ni.com/legal/termsofuse/japan/ja/)
