音響/振動測定の理論と実測
概要
このドキュメントは、 「センサ・信号計測の理論と実測ガイド」 ポータルサイトの一部です。
音響/振動および圧電(IEPE)センサの概要
|
振動とは、物体が一点を中心に前後、左右、または上下の機械的な運動を繰り返すことをいいます。振動機械装置の一般的な例は、図1に示したような「1自由度力学モデル(粘性減衰系)」です。振動は、飛行機の翼やゴングといった物体の表面にも起こります。多くの場合、振動は不要なものです。エネルギーの浪費、疲労/ストレス/騒音の原因となるため、システムは通常こうした振動が最小限になるように設計されます。一方で、振動構造は圧力波または音を生成し、楽器などに用いられます。 |

図1.自由度力学モデル(粘性減衰系)
音響と振動は本来、異なる媒体における振動です。振動が音を作り出せるのと同様、空気を伝わって移動する音波もまた固体の中に振動を発生させることができます。音響と振動の原理には相関関係があり、したがって、音響と振動の測定もまた本質的に類似しています。
音響と振動はどちらも揺れ(振動)で表すことができます。最も簡単な揺れは時間によって表される次のような正弦波形です。
![]()
角周波数ωと位相φという定数が使用されています。角周波数ω(ラジアン/秒)とƒ(Hzまたは秒-1)は次の式のような関係にあります。ω =2πƒ角周波数は通常、位相φとの関係において説明できます。φは、初期時刻t0における、指定した基準ポイントの波形の補正値を表し、通常、「度」または「ラジアン」として表します。
音響/振動測定の解析
実際のアプリケーションでは、測定した電圧信号は複雑な波形をしていて、複数の周波成分を含んでいます。通常、音響/振動解析ではこうした周波成分の特定と調査を行います。そのためには、ラプラス変換、Z変換、またはフーリエ変換を使用して、信号を時間領域から周波数領域に数学的に変換する必要があります。フーリエ解析は、こうしたアプリケーションで最もよく使用されます。信号の各周波成分に関して、デジベル(dB)で表される振幅、および関連位相ω(度またはラジアン)を求めることができるからです。
IEPEセンサ
音響と振動の測定に通常使用される指標は、それぞれ加速度と音圧レベルです。こうした指標は一般的に加速度計(衝撃/振動)およびマイクロフォン(音)といったデバイスを使用して測定します。
加速度および圧力を測定する多くのセンサは、圧電効果を利用しています。圧電効果とは、圧縮応力を受けたときに、セラミックまたは水晶振動子が電位を発生させる現象のことをいいます。こうした機械的応力は、加速、歪み、圧力といった力によって引き起こされます。マイクロフォンの場合、音波が振動板または薄膜を振動させ、応力を周囲の圧電性結晶に伝達します。一方、加速度計は衝撃/振動に応じて、周囲の結晶に力を直接加えます。発生する電圧は、結晶の内部応力に比例します。
圧電センサの特定のクラスであるIEPE(integral electronic piezoelectric)は、圧電性結晶の横にアンプを内蔵しています。圧電トランスデューサが発生させた電荷は非常に小さく、センサが生成した電気信号はノイズの影響を受けやすいため、精度の高い電子機器を使用して、信号を増幅・調節し、出力インピーダンスを低減する必要があります。したがって、IEPEは、精度の高い電子機器をできる限りトランスデューサに密接させる形で統合して耐ノイズ性を向上し、コンパクトで便利なパッケージを実現するために欠かせない要素です。典型的なIEPEセンサは、外部の定電流ソースを電源とし、圧電性結晶の電荷の変動に応じて出力電圧を調節します。IEPEセンサがセンサ励起(電流)と信号出力(電圧)の両方に対して使用するワイヤは、1本または2本です。
音響/振動測定の理論と実測
音響/振動測定のための信号調節回路は非常に簡単です。加速度または音圧レベルの測定に通常使用するシステムには次のコンポーネントが含まれています。
- センサ
- センサを励起する電流ソース
- ノイズを除去する適切な接地
- システムのDCオフセットを除去するACカプリング
- センサの信号レベルを上げる計測アンプ
- ノイズを除去し、データ集録システムのエイリアスを防ぐためのローパスフィルタ
- 複数の信号間でタイミングを合わせるための同時サンプリングおよびホールド回路
前述のとおり、音響/振動測定では、非常にノイズの影響を受けやすくなります。しかし、正しくシステムを接地することで、この影響は低減できます。不適切な接地が原因で起こるグランドループや浮遊ノードを回避するには、信号調節入力かセンサのどちらか一方を(両方ではなく)接地する必要があります。
センサから集録する信号にはDCとACの両方の成分が含まれており、DC成分によってDCオフセットがかかっています。ACカプリングは、信号と直列に接続されたコンデンサによって、システムのDCオフセットを取り除きます。ACカプリングセンサシステムは、寿命および温度の影響が引き起こすセンサの長期DCドリフトを除去します。これにより、分解能、およびシステムの使用可能なダイナミックレンジが大幅に向上します。
高確度な計測を行うには、システムのサンプリングレートは測定する信号の周波数の最低2倍である必要があります。また、測定対象の周波数帯のみを確実にサンプリングし、折り返し雑音(エイリアス)を防ぐには、ローパスフィルタ(アンチエイリアスフィルタ)を追加します。これにより、高周波ノイズを取り除くことができ、エイリアスを防ぐことができます。
センサを計測器に接続する
例として、加速度計/マイクロフォン計測を考慮して設計されたNI 9234 Cシリーズモジュールをご紹介します(図2)。NI 9234は、51.2 kS/秒で4つのアナログ入力を同時サンプリングできます。また、ソフトウェアで設定可能なIEPE信号調節、AC/DCカプリング、およびアンチエイリアスフィルタを備えています。NI 9234はNI cDAQ-9172シャーシで使用できます。
図2.NI 9234 CシリーズモジュールとNI CompactDAQシャーシ
モジュールにはBNCコネクタが4つあり、それぞれ、IEPEセンサに接続することができます(図3)。コネクタのセンターピンであるAI+は、DC励起およびAC信号接続を提供します。コネクタの外皮であるAI–は、励起帰還路およびAC信号の接地基準になります。

図3.NI 9234 BNCコネクタ割り当て
IEPEセンサには、CシリーズモジュールのBNC端子入力に接続するために、適切なケーブルまたはコネクタ、あるいはその両方が必要です。三軸加速度計には、3つの出力があり、1つの集録チャンネルにつき1つの軸が割り当てられ、それぞれに対し、励起電流ソースやアンチエイリアスフィルタといった信号調整を必要とします。NI 9234はIEPEセンサに必要な定電流ソースを備えているため外部電源を用意する必要がなく、センサを接続するだけで測定が可能になります。また、NI 9234はプラグアンドプレイセンサ(TEDS)に対応しており、センサ上のEEPROMに記録されたセンサの設定情報を測定ソフトウェアに自動的に読み込むことができます。センサ固有の設定を手動入力する必要がなくなるため、入力ミスによる計測ミスを防ぐことができます。特に多数のセンサを使用する際には、セットアップにかかる工数が大幅に削減できます。
測定結果の表示:NI LabVIEW
システムの構成後、LabVIEWグラフィカルプログラミング環境でデータを集録・表示することができます(図4)。
ソフトウェア内で、集録した電圧をスペクトル(周波数領域)解析関数によって周波数データに変換することができます。簡単なサンプルとして、高速フーリエ変換(FFT関数)があります。さらにデータの高度なソフトウェア処理を行うには、NI Sound and Vibration Measurement Suiteなど、当社が提供する豊富なツールの中から最適なものをお選びいただけます。

図4.NI音響/振動ツールキットのパワースペクトル
推奨ソフトウェアとハードウェア
音響/振動Webイベント、チュートリアルなどのハウツーリソース
音響/振動対話式アプリケーションのチュートリアル、製品デモ、およびユーザ事例(英語)
プラグアンドプレイセンサ ~短時間でのセンサ構成を実現する最新テクノロジとその仕組み~
法律関連事項
本チュートリアル(以下「チュートリアル」という)は、National Instruments(以下「NI」という)によって作成されたものです。本チュートリアルは、NIにてサポートされていますが、本チュートリアルの内容に関するテストや検査が完全に行われていない可能性があり、チュートリアルの品質について、もしくは、関連製品およびドライバの各改訂版に対するサポート継続については、何らの保証も適用されません。本チュートリアルは、いかなる保証もなく「作成された状態のまま」で提供されており、ni.com/jpの使用条件に特別に規定されている特定の制約事項に従うものとします。 (http://ni.com/legal/termsofuse/japan/ja/)

