ユーザ定義のテストプラットフォームによる次世代型無線機器のテスト
概要
最新のワイヤレス機器は、これまでになく多くの通信規格に対応しています。この技術資料では、柔軟性の高いPXIソフトウェア/ハードウェアプラットフォームを使用して、1つのプラットフォームで複数のワイヤレス規格をテストする方法について説明します。
“私が発見した無線波が実用化されることはおそらくないだろう。”
- ハインリッヒ・ルドルフ・ヘルツ(1857-1894)
新しい技術が将来どのように使われるかを予測するのは、簡単なことではありません。ワイヤレス技術がこれほど発展して年間10億台もの携帯電話が製造されるようになることを、1970年代には誰が予測したでしょうか。ワイヤレス技術が日常生活で広く利用されるようになったことは、消費者にとっては多くのメリットがありますが、一方でメーカーでは、複数のワイヤレス規格に対応したワイヤレス機器1つに多くの機能を組込むため苦心を強いられています(図1)。このとどまるところを知らないワイヤレス機能への欲求のために、計測器メーカーには同じプラットフォームで全ての要件に対処できる製品を開発することが求められています。その結果、そのようなニーズに対応できる最新のテストシステムの開発が必要となりました。
図1.ワイヤレス規格の種類は加速度的に増加している
従来のRF計測機器を超えた計測システム
消費者は、常に新しい機能と性能の向上を求めています。そのような欲求がエスカレートすると、製造ラインにおけるテスト・評価時間は漸近的に0に近づき、テスト・評価項目は無限に増加します(図2)。ワイヤレス機能を搭載したデバイスの数が増えるにつれ、多様な機能を短時間でテストすることが求められるため、製造担当にとっては難題となります。
図2.製造テスト時間は漸近的に0に近づき、テスト項目数は無限に増加
最新のワイヤレス機器のテスト要件に対応する方法として、将来の要件の変更に伴って拡張することが可能なプラットフォームをベースにシステムを構築する方法があります。ナショナルインスツルメンツのPXI RFプラットフォームは、NI LabVIEWソフトウェアとPXIハードウェアを利用したユーザが定義できるRF計測プラットフォームです。PXI Expressの帯域幅とマルチコアプロセッサの並列処理機能を両方活用できるため、技術の進歩とともにテストの速度も向上させることができます。このプラットフォームでは速度が従来型計測器に比べ約10倍に向上しましたが、マルチコア技術の登場により同じプラットフォームで100倍もの速度向上を実現することが可能となりました。
新製品のNI PXIe-5663 RFベクトル信号アナライザとNI PXIe-5673 RFベクトル信号発生器を使用すれば、最大6.6 GHzの計測機能が実現できます(図3)。NI PXIe-5663は、最大50 MHzの帯域幅で、10 MHzから6.6 GHzまでの信号解析が可能です。NI PXIe-5673は、最大100 MHzの帯域幅で、85 MHzから6.6 GHzまでの信号生成が可能です。同じく新製品のNI PXIe-1075 18スロットシャーシとともに使用すると、PCI Expressレーンが全てのスロットにルーティングされていて、最大1 GB/秒のスロット帯域幅、テストシステム全体では4 GB/秒の帯域幅を実現できるため、PXIプラットフォームでの高速RFテストが可能となります。

図3.NI PXIe-5663ベクトル信号アナライザとNI PXIe-5673ベクトル信号発生器を使用することで、6.6 GHzの計測機能を実現可能
新しいRFモジュール式計測器は、高性能のマルチコアプロセッサのメリットをフルに活用できますので、高速のRF/ワイヤレス自動計測に最適です。LabVIEW 8.6を使ってマルチコアCPU上で並列計測アルゴリズムを実行する場合、新製品のRFベクトル信号アナライザとRFベクトル信号発生器を使用することで、多くの一般的なRF計測の速度を従来型計測に比べ大幅にアップさせることができます。例えば、これらのRFモジュール式計測器は一連のWCDMA計測を従来型計測器より最大4倍の速さで実行できます。個々の計測なら20倍以上の速さを実現できるものもあります。さらに新しいマルチコアプロセッサが利用可能になれば、CPU部分を入れ替えることで、RF計測ハードウェアやLabVIEWプログラムに一切変更を加えなくても、RF計測にかかる時間を短縮することができます。これにより、最高性能の計測と、システム寿命の延長、設備投資コストの削減が可能となります。
新製品の6.6 GHzモジュール式計測器は、最新の16ビットD/Aコンバータ(DAC)やA/Dコンバータ(ADC)などの商用技術を利用することで、高い性能を実現できます。ダイレクトRFアップコンバージョンを行うNI PXIe-5673 RFベクトル信号発生器は最大で100 MHzのRF帯域幅を実現可能です。さらに、追加で「障害モード」を使用すれば、オンボードFPGAを活用してゲインインバランス、IQオフセット、I/Q直交度(quadrature skew)を調整できます。特定の周波数でこれらのパラメータを最適化することで、-85 dBcより優れた搬送波/イメージ抑圧(carrier and image suppression)が可能となります。NI PXIe-5663 RFベクトル信号アナライザは、通過域(パスバンド)の平坦性(passband flatness)や低位相ノイズといった特性を備えているため、変調信号を正確に計測することができます。例えば、WCDMAの一般的なEVM性能は、2 GHzで0.8パーセント、3.8 GHzのWiMAXで- 52 dBとなっています。
これらの新製品はPXIがベースになっているため、複数のRF/ワイヤレス規格を1つのプラットフォームでテストすることができ、さらにPXIプラットフォーム特有のスピードと拡張性も実現できます。802.11、DVB、GPS、WiMAX(802.16e/dまたはm)、MIMO-OFDM(Multiple Input/Multiple Output-Orthogonal Frequency Division Multiplexing)など、どのような規格のテストにおいても、PXI製品なら複雑な要件に対処することができます。
例えば、最新技術の多くはMIMO-OFDMをコアエンジンとして採用しています。従来型計測器で2x2、4x4のMIMOシステムを実現するには、複数の「箱」を接続します。この方法では、システムのサイズが大きくなる、システムの使用していない部分(複数のローカルオシレータなど)の重複によりコストが増える、限られた時間の中で複数の「箱」を効果的に同時トリガできないなど、多くのデメリットがあります。
PXIプラットフォームなら、そのような問題点を解決できます。まず、各モジュールは、システムのバックプレーンを共有しています。また、スタートリガで各モジュールを1ナノ秒の時間枠内でトリガできるため、モジュール間で極めて高精度な同期が可能です(図4)。2つめとして、同じシャーシ内の複数のモジュール間でローカルオシレータを共有できるため、コストを削減することができます。最後に、モジュールのサイズが小さいため、複数のMIMO構成を1つの可搬型のシャーシに収めることができます。
図4.PXIのスタートリガによりモジュール間で1ナノ秒の高精度な同期が可能
ソフトウェアによるユーザ定義型プラットフォーム
計測器メーカーが新たな計測機能をユーザに提供する際は、計測機器に組込むファームウェアを作成して提供していました。この方法では、特に規格化前の技術を扱っている場合や次世代システムを試作している場合、ユーザは計測器メーカーがファームウェアを提供するまで待たなくてはいけないため、研究開発が遅れてしまう可能性があります。
このジレンマを解消する1つの方法として、ソフトウェア定義のアーキテクチャを使って現在市販されていない機能を開発することができます。ソフトウェア定義アーキテクチャの利用は、最新のテスト機器を上回る機能を提供するため、従来型テスト機器を利用するメーカーに対し優位に立つ上で重要です。ただし、「ソフトウェア定義」という語には多くの意味があり、ベンダがソフトウェア定義のアーキテクチャを強く勧めるからといって、その設計を利用したりメリットを受けられるとは限りません。例えば、アルゴリズムを開発し計測器に組込んだり、現在提供されていない機能を作成することができなければ、ソフトウェア定義もユーザの役には立ちません。
現行の技術に取り組んでいるならソフトウェア定義のオープンプラットフォームは不可欠ですが、技術者はより多くのものを求めます。多くの技術者は今、計測システムのソフトウェアもハードウェアもカスタマイズしたいと考えています。また、同じシステムを研究開発と製造ラインで使用しようとしています。そうすることで、追加の計測など必要に応じてテストシステムにハードウェアを追加することが可能となります。
例えば、ナショナルインスツルメンツのユーザはNI LabVIEWソフトウェアとPXIハードウェアを使用すれば、ユーザが定義するシステムを構築できます。本当のオープンソフトウェアプラットフォームであるLabVIEWなら、計測器ベンダに作業をしてもらわなくても、ニーズに合わせてソフトウェアをカスタマイズすることが可能です。例えば、RF計測に加え圧力や温度の計測機能が必要な場合は、NI PXIモジュールを追加することで対応できます。このカスタマイズ性の極めて高いプラットフォームでは、70社を超えるベンダが提供するDCから26.5 GHzまでの1,500種類以上の計測用モジュールが利用できます(図5)。その中にニーズに合ったものがない場合は、PXI Systems Allianceの仕様に従ってPXIモジュールを開発することができます。そのようにして、テストシステムの柔軟性を限りなく高めることが可能です。

図5.70社以上のベンダが1,500種類以上のモジュールを提供
長期にわたって性能を維持
他のあらゆるハイテクデバイスと同様、陳腐化(obsolesecence)は大きな問題となります。市場で最高速の処理能力を持つコンピュータについて考えてみます。購入後数週間または数か月後には、より速い機種が発売されます。最高性能をできるだけ長く保つために最も適切なコンピュータの購入タイミングを正確に知るのは難しいため、購入の決断がなかなかできないということにもなります。
購入量が多かったり、その製品を長年使い続ける必要がある場合は、問題も大きくなります。例えばRF機器は、5~7年ごとに買い替える必要があるため、製造ライン全体に設置するには数億円単位のコストがかかります。その機器を製造ライン用に一度購入したら、現行技術のシステム性能で数年間使い続けなくてはなりません。新たに購入すると、当初は最新技術に比例したテスト速度を実現できます。ただし時間が経つにつれ、技術の進歩とともにそのシステムは最速ではなくなり、製品の需要に応えるべく技術者は速度を保つのに大変な苦労をすることになります。
LabVIEWとPXIを使用すれば、マルチコアプロセッサを最大限に活用することで、業界でも最速レベルのテスト速度を保つことができます(図6)。時間の経過とともに、市場で最速の製品と比較して速度が低下する従来型のRFテスト機器と異なり、マルチコアプロセッサなら、コア数が増えるプロセッサ部分のみを入れ替えることでテストシステムの速度が向上します。
図6.NI LabVIEWとPXIで拡張性のある高性能な並列テストシステムを実現
PXIを使用した次世代機器のテスト
高速で柔軟性の高いNI PXIe-5663とPXIe-5673を使用することで、PXI RFプラットフォームは最新のRF機器のテスト/設計上の難題を克服することができます。このようにして、最新技術に遅れをとらない拡張/アップグレード可能なユーザ定義のソリューションが構築できますので、設備の寿命を延ばすとともに設備投資を最適化することができます。
追加情報
NI PXIe-5663: 6.6 GHz ベクトル信号アナライザ
NI PXIe-5673: 6.6 GHz ベクトル信号発生器
Joseph E. Kovacs
Senior RF Marketing Manager
Joseph.Kovacs@ni.com
法律関連事項
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