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概要
ひっきりなしに市場に登場する新しい家庭用電化製品は、高速、小型、低価格で、複雑化しています。例えば、現在のMP3プレーヤーは、メニューで曲目を閲覧したり、アルバムジャケットをめくったりすることができるうえ、ゲームを楽しんだり、カラーのカレンダーを表示したりすることもできます。このような新しい製品のバッテリ寿命をどれだけ長くできるかというのが、設計エンジニアが抱える最大の課題の一つとなっています。したがって、消費電力およびバッテリ性能のテストと特性解析に多くの労力が費やされるのは驚くに値しません。
さらに、既存のテスト機器が新しいテスト要件を満たすよう適応させるのも容易なことではありません。ナショナルインスツルメンツは、こうしたニーズに対して、Virtual Instrumentation(VI:仮想計測器)と呼ばれるソフトウェアを中心としたアプローチを提案しています。
従来のアプローチから脱却したVIの特長は柔軟性で、バッテリテストと消費電力テストはニーズに合わせてテスト内容を変更することができます。その結果、テストデータはテスト要件そのものに応える内容になります。これによって、しばしば内容が古くなってしまっている「標準」テストから性能を概算または推測するといった必要もなくなります。
例えば、NI LabVIEW を使用したNI PXI-4071は、リーク電流、突入電流、消費電力、バッテリの予備容量、バッテリの内部抵抗といったバッテリ電力の特性解析に関する問題を解消するのに必要な、柔軟性、機能、および高い分解能を備えています。図1aに示した NI PXI-4071 FlexDMM は、フル機能の26ビット(7½桁)デジタルマルチメータまたは1.8 MS/秒デジタイザとして機能します。電流計測は、ピコアンペア(10-12A)範囲まで可能です。こうした機能が、バッテリの特性解析を行うための鍵となります。
図1bに示されているのは、PXIシステムと、RFダウンコンバータ、高速デジタイザ(オシロスコープ)、デジタルマルチメータ、ダイナミック信号アナライザといった、複数のPXI用 モジュール式計測器 です。ユーザはこれらの PXI計測器 を直接プログラミングして、PCIバスを利用して高速でデータを転送することができます。
a.
b.
図1 – a. PXI-4071デジタルマルチメータモジュール
b. PXIシステムと複数のモジュール式計測器
ポータブル(携帯)機器のリーク電流と消費電力
リーク電流および消費電力の特性解析によって、回路の性能を測定して最適化することが可能になります。
リーク電流の計測
リーク電流は、機器がオフ状態のとき、バッテリから流れ出してしまう電流の量のことです。リーク電流の特性解析によって、使用されていないときにバッテリがどれだけもつかがわかります。この計測を行うには、バッテリを直列接続して、ピコアンペア単位で電流を計測できるNI FlexDMM(図2を参照)のような精度の高い電流計測器を使用する必要があります。

図2. リーク電流と過渡電流を計測するには、FlexDMMを電流メータとして構成し、検査対象デバイス(DUT)とそのバッテリ(BDUT)の間で直列接続する。
消費電力の計測
デバイスの消費電力の傾向を知れば、バッテリの寿命を推測することができ、設計を改善することができます。バッテリ電源のポータブル機器の消費電力を計測するには、電圧デジタイザと電流デジタイザで同時にデータ集録します。電流を高い分解能、高速でA/D変換する機能は、従来のデジタルマルチメータにはありません。しかし、NI FlexDMM は、1.8 MS/秒でサンプリングできる電流デジタイザとして動作させることができます。この機能があれば、図2に示したのと同じ計測器と接続を使用して、リーク電流と過渡電流の両方を集録することができます。過渡電圧も集録する場合は、もう一つFlexDMMを追加して、1.8 MS/秒電圧デジタイザとして構成し、バッテリの出力に接続し、2つのFlexDMMを構成して、同時にデータ集録を開始します(関連リンク1、2)。
バッテリ電圧が全負荷範囲にわたって大きく変化しないと予測される場合、デジタイザを1つ使用して過渡電流を計測できます。すると、計測した電流と仮定した定電圧から電力が算出できます。
図3は、MP3プレーヤーの消費電力計測を示しています。計測には、NI FlexDMM、NI LabVIEWグラフィカルプログラミング環境、および計測/解析のためのNI-DMM計測ドライバソフトウェアが使用されました。このMP3プレーヤーは、曲の演奏中も、常に低消費電力を維持しようとしています。バッテリからの電力が必要になるのは、ユーザがメニューを閲覧するとき、またはメモリに曲をロードするときのみで、そういったときには大きな電流スパイクが発生します。

図3. NI FlexDMMおよびNI LabVIEWを使用してMP3プレーヤーの消費電力を計測する
バッテリの特性解析
あらゆる種類のバッテリを特性解析することによって、ポータブル機器に必要な適切な内部抵抗を持ち、適度な電流を供給する小さなサイズのバッテリを選択することができます。また、バッテリの予備容量の計測も重要です。バッテリが供給する電力は、電気化学的プロセスの結果です。つまり、こうした2つのパラメータの値は、計測方法、温度、寿命、製造プロセスなど、数多くの要素によって異なります。
予備容量の計測
バッテリの予備容量は、バッテリが保存できるエネルギーの量です。通常、バッテリをある特定のレートで放電し、セルの電圧がある特定の値にまで落ちるまでの時間を計ることで計測できます。値はセルの種類によって異なります。通常、バッテリのメーカーは、1Cという放電レートによってバッテリを評価します。つまり、公称容量値が1000 mAhのバッテリの予備容量が100%の場合、そのバッテリは1時間に1000 mAの電流を供給できることになります。例えば、このバッテリが1000mAの電流値を持っていながら45分しか持続しなかった場合、バッテリの予備容量は75%だったということになります。負荷が大きいほど予備容量の値が低くなるほか、上記で述べたようなその他の要素で予備容量の値は異なります。
予備容量を計測するには、特定の放電レートに対応するバッテリに負荷を加え、長時間にわたって高確度な電圧計測を行う必要があります。FlexDMMを使用してこの計測を行うには、DC電圧モードの デジタルマルチメータ としてFlexDMMを構成して、バッテリの端子に直接接続する必要があります(図4を参照)。

図4. 検査対象バッテリ(BDUT)の電圧変化を計測するには、FlexDMMを高確度電圧メータとして構成し、バッテリの端子に直接接続する。予備容量を計測するには、長時間負荷を接続し、FlexDMMによって連続的にデータ集録を行う。
内的抵抗の計測
バッテリの内的抵抗によって、供給できる瞬間電流が決まります。内的抵抗の値が低ければ、例えば、MP3で曲を変更した場合などの急な電流の要求に対して反応がよくなります。バッテリの内的抵抗の値は通常、ミリオーム(m)単位です。ただし、セルには、マイクロオーム(μΩ)レベルの内的抵抗を持ったものもあります。バッテリの内的抵抗は一定ではなく、接続された負荷によって動的に変化します。また、この抵抗は温度や寿命の値が増えるにつれ大きくなり、同じタイプのセルであっても使用されている素材や製造プロセスによって異なります。
内的抵抗が大きくなると、性能が低下することがあります。バッテリの交換時期を判断するために、バッテリの抵抗の増加率を監視して、新しいバッテリの抵抗値と比較する場合があります。また、用途に対して十分なピーク電流を提供できるかどうかを判断することが重要になる場合もあります。どちらの場合でも、機器が実際にバッテリに負荷を与えるときと最も類似した状態で計測することによって、最も有用な情報が得られます。
バッテリの性質をさらによく知るために、電気化学モデルが使用されます。このモデルで最もよく知られているのは、Randles型等価回路モデル(関連リンク3)です。このモデルでは、インダクタLが抵抗R1と、また、別の抵抗R2とコンデンサCが並列接続されたネットワークと直列接続されています(図5を参照)。図3のようなアプリケーションでは、低周波数における負荷の応答に注目します。この場合、インダクタンスの影響は無視してもよく、R1とR2の合計バッテリ抵抗を考慮する必要があります。

図5. Randles型等価回路モデル
従来、バッテリの内部抵抗は、1kHzで、高いDC電流源、またはAC源をバッテリの端子に与えて、電圧応答性を測定することによって計測されてきました。
DC電流源を使用した方法では、数アンペア単位の負荷電流を使用して、R1+ R2で電圧降下を発生させて計測を可能にします。この方法は、1/fノイズの影響を受けやすいため、低電流信号を使用すると、ノイズフロアに近い電圧降下が発生します。R1+ R2の値は、電流を与える前と後の電圧の差を電流振幅と割り算することによって算出します。
AC源を使用した方法では、AC電流信号を通常1kHzで与えます。すると、1/fノイズの影響を受けにくい計測が可能になります。この方法では、DC源よりも低い電流振幅を使用しますが、Randles型等価回路モデルの場合、直列抵抗のR1以外はほとんど影響を受けません。Cは多くのセルの場合かなり大きく、セルのタイプおよび容量によって、数千マイクロファラッドから数ファラッドまでの幅があります。したがって、高周波数では、そのリアクタンスは小さく、R2の影響は遮断されます。この計測方法は、バッテリの抵抗の増加率を監視して、新しいバッテリの抵抗値と比較する場合に有用です。
このテストシステムは信号発生器とNI FlexDMMを使用して構築できます。図6は、NI PXI-5412高速電圧発生器を電流源として使用するのに必要な接続とコンポーネントを示しています。この信号源の出力インピーダンスは50Ωです。バッテリは実際にはショートしたような動作を起こします。したがって、出力に100 Ωの抵抗を接続し、1 kHzの信号で1 Vを出力することによって、NI PXI-5412信号発生器モジュール は、1 kHzで6.6 mAの電流を生成します。33uFのコンデンサはDC信号を遮断するために使用します。FlexDMMは、バッテリの端子に直接接続し、最も精度の高い範囲で電圧デジタイザとして構成します。内部抵抗は、電圧波形と電流波形の1 kHzにおけるRMS値またはFFT振幅の割合として算出します。
図6. ACを使用した方法の場合の内部抵抗を計測するのに必要な計測コンポーネントと接続。電圧源(NI PXI-5412)は、抵抗を出力に追加することによって電流源として使用します(コンデンサを使用してDC信号を遮断します)。FlexDMMは、ACカプリングを有効にして電圧デジタイザとして構成し、バッテリの端子に接続します。内部抵抗は、電圧波形と電流波形の1 kHzにおけるRMS値またはFFT振幅の割合を算出します。
現在のセル(アルカリ、リチウムイオン、ニッケル水素など)の内部における電気化学的プロセスは、Randles型等価回路モデルとは若干異なるモデルを持っており、ACを使用した計測をさらに複雑にします。1 kHzにおける計測方法で得た結果を実際の用途に関連付けるのは難しいかもしれません。
下記に示した計測例では、多くの家庭用電化製品は電源が入ると軽い負荷を維持し、機能が使用されると前述の図3のように大きい負荷がかかるということが考慮されています。この条件を再現するため、テストシステムではバッテリに対してあらかじめしばらくの間軽い負荷(1 mA程度)を与えておき、その後、大きい負荷(100 mA程度)を与えて、この追加の負荷による電圧降下を計測します。内部抵抗は、負荷の値と負荷を与えた結果得られる電圧から算出します。この計測方法は、Energizer社(関連リンク4)など、一部のバッテリメーカーで使用されており、これによって、バッテリの内部抵抗の特性解析が行われます。
この計測システムを構築するには、同じソフトウェア中心のシステムを使用し、バッテリに異なる負荷抵抗を接続するためのプログラム設定可能なスイッチマトリクスを追加します。これで、デジタルマルチメータを使用して、バッテリの端子で簡単に電圧降下を測定することができます。FlexDMM、検査対象バッテリ、および負荷の接続の仕方は図7に示したとおりです。
図7 – a. あらかじめ与える負荷がバッテリに接続されており、バックグラウンドで一定の負荷を与える回路にバッテリがある場合をシミュレーションしている。バッテリの端子における電圧はFlexDMMを使用して計測します。このFlexDMMは、入力インピーダンスが10 GΩを超えるDC電圧を計測するように構成されています。
b. 2つ目の負荷は並列接続され、電圧降下を発生させる。内部抵抗は、この電圧降下をRLOADに流れる電流で割ったものです。
図8aは、負荷を与えることによって発生する電圧降下を表しています。ポイント1は、あらかじめ与える1 mAの負荷がバッテリに接続された瞬間です。ポイント2は、100 mAの負荷が接続された瞬間で、ポイント3は、この負荷が取り除かれた瞬間です。内部抵抗(RI)を算出するには、電圧の差異をポイント2と3の間の電流の差異で割ります。ポイント2の電流(I2)は、電圧(V2)をあらかじめ与える負荷(RPL)で割ったものです。また、ポイント3の電流(I3)は、電圧(V3)を負荷(RL)で割ったものです。
RI = ΔV/ΔI
ΔV = V2 - V3
ΔI = I2 – I3 = (V2/RPL) - (V3/RL)
あらかじめ与える負荷と後に与える負荷を一組にして使用することによって、異なる負荷を与えられているバッテリの内部抵抗を計測することができます。図8bは、あらかじめ与える負荷を1 mA、その後に与える負荷を10 mA、44 mA、95 mA、180 mA、および265 mAとした場合のDサイズの内部抵抗を示しています。

図8 – a) Dサイズバッテリにあらかじめ1 mAの負荷を与え、その後に100 mAの負荷を与えて発生させた電圧降下
b) Dサイズバッテリの内部抵抗と負荷。あらかじめ1 mAの負荷が与えられ、その後、10mA、44mA、95mA、180mA、および265mAが与えられている。
内部抵抗の小さな信号計測の場合は、大きな負荷(100 mA程度)をあらかじめ与えてから、小さな負荷(1 mA程度)を追加します。今度は2度目に与えた負荷による電圧降下がおそらく数十マイクロボルトの範囲内で小さくなります。この小さな電圧を検出するには、検査対象と同じタイプの電源またはサンプルバッテリを基準電圧として使用して検査対象バッテリをゼロにし、バッテリと基準電圧信号の電圧差異を計測します(図9を参照)。これによって、デジタルマルチメータ は最も精度の高い範囲に設定されます。

図9. 小さな信号計測のための接続。FlexDMMはさらに精度の高いDC電圧範囲に構成できる。
テストシステム開発を容易にする
バッテリが広く使用されている今日、消費電力とバッテリ性能の特性解析は重要視されます。バッテリをテストする場合は、電化製品が実際にバッテリに負荷を与えるときと最も類似した状態でテストすることによって、最も有用な情報が得られます。
既存のテスト機器が新しいテスト要件を満たすよう適応させるのは容易なことではありません。ナショナルインスツルメンツのようなテスト装置メーカーは、こういった傾向に応えるため、ニーズにぴったりと合った計測システムを構築するのに必要なソフトウェアツールを提供しています。従来のようにベンダ定義の固定された機能によってテストを制限されることはもうありません。このソフトウェア中心のアプローチをVirtual Instrumentationと呼びます。
このアプローチによって、バッテリが実際に使用される状態を正確に再現できるテストシステムを作成し、定義することができるようになります。柔軟性に優れたソフトウェアと組み合わせた広範囲をカバーできる計測器でバッテリの使用状況を再現することによって、ほぼ全てのタイプのバッテリと負荷を1つのシステムで特性解析することができます。
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執筆者:
ナショナルインスツルメンツ社デジタルマルチメータハードウェアエンジニア、Claudia Lorente
ナショナルインスツルメンツ社計測テクノロジディレクター、Ken Reindel
参考資料:
高性能モジュール式計測器(デジタルマルチメータ、デジタイザなど)
計測の基本チュートリアルシリーズ
関連リンク
[1] デジタルマルチメータによる実効電力の計測
[2] LabVIEWサンプルプログラム:『FlexDMMの1.8 MS/秒デジタイザ機能を使用して電力計測を行う』
[3] B HARIPRAKASH、S K MARTHA、A K SHUKLA.著、『Monitoring sealed automotive lead-acid batteries by sparse-impedance spectroscopy』 Proc. Indian Acad. Sci. (Chem.Sci.)Vol. 115、Nos 5 & 6、October–December 2003、pp 465–472、Indian Academy of Sciences
[4] Energizer Cylindrical Alkaline - Application Manual、P7、8 - Internal Resistance
Legal
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